痔は3人に1人が患っているといわれるほどの国民病のひとつです。
痔は男性の病気と思われていたのは昔の話です。
最近では女性も痔で悩んでいる人が増えてきました。
出産・妊娠をきっかけに、あるいは女性の社会進出によって、ストレスや過労、飲酒の機会が増えたことが原因といわれています。
「痔」といっても様々です。痔は、一般的に市販の痔の坐剤や注入軟膏・軟膏で治療可能です。
しかし、痔に間違いやすい医師の治療(切開手術)が必要な肛門周辺の恐いオデキもありますのでイボ痔との違いを紹介します。

表1

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1.痔の種類

基本的には、痔には、イボ痔と切れ痔の2種類です。

(1)イボ痔(痔核)

肛門と直腸の境界は歯状線という1mm位の窪みが8個ある境目があって、その歯状腺の内側の直腸側にできたイボ痔を「内痔核」、歯状線の外側の肛門側にできたイボ痔を「外痔核」といいます。
そもそも、イボ痔とはなんなのでしょう。
直腸と肛門の境目の歯状腺周辺には、毛細血管が集まっていて、様々な要因で、その毛細血管内が何らかの原因で血流障害を起こし、毛細血管がふくれて(鬱血状態)、その鬱血状態がしこりのような塊になってしまった状態がイボ痔(痔核)です。
内痔核の場合、痛みはないのですが、外痔核の場合は座ったときにお尻がペチャンコになって、外痔核が圧迫され、ある日突然痛みを感じるようになります。
イボ痔によって、直腸や肛門が狭くなるので、便の通過が困難になって便秘症状を悪化させてしまう原因となります。
その結果、便が長時間大腸内に留まり、腸内環境の悪化を招き、便秘の悪化を招くだけでなく、便秘によって便が通過するときに擦れて出血をともなう原因にもなります。
また、さらに内痔核が進行すると、イボが肛門の外に出てきて、脱出と呼ばれる状態になります。
脱出していても、初めのうちは指で押すと引っ込みますが、さらに症状が進むと指で押しても引っ込まなくなります。
イボ痔は、市販の注入軟膏(イボ痔の治療薬)で改善されますので、出血や排便時に痛みを感じるような時は、早めに治療をしましょう。
ただし、注入軟膏を塗っても1週間以上排便時の痛みや出血が止らない時は、違う病気の場合もありますので、医師に相談しましょう。

(2)切れ痔(裂肛)

排便時に、便が固く、固い便と肛門の皮膚が摩擦を起こし、放置しておくと、傷口が深くなって、排便時に強い痛みと出血があります。
一旦切れ痔になってしまうと、排便の度に痛みと出血をともないます。
その恐怖で、無意識に便意を我慢してしまって、その結果切れ痔が回復に向かうこともありますが、便秘になってしまうので、再び排便時に切れ痔が悪化してしまうという悪循環になりがちです。痛みを恐れて排便を我慢するくらいなら、痔の軟膏を患部に塗布して傷口の早めの回復を図りましょう。
切れ痔も悪化させてしまうと、傷が深くなって炎症を起こし潰瘍やポリープができて、肛門狭窄になってしまうこともあります。
こうなると手術が必要になりますので、たかが「切れ痔」といっても侮れません。

2.怖い痔瘻に発展する肛門周囲膿瘍

(1)肛門周囲膿瘍

体力が低下して下痢が続くようなときは、免疫力が低下しています。
そんな時に、大腸と肛門の境目の歯状線の窪みに下痢が入り込んでしまったら、歯状線の窪みに繋がっている肛門線という組織腺から大腸菌が入り込んで感染症を起こし、肛門腺奥で膿がたまります。この状態が肛門周囲膿瘍です。

(2)痔瘻(穴痔)

肛門周囲膿瘍を放っておくと、歯状腺近くに盛り上がってきた膿を便が圧迫し、あるいは摩擦によって膿を包んでいる粘膜を傷つけ、膿んだニキビを押しつぶすと膿が勢いよく破裂する時のように、歯状腺側の肛門腺の口から膿が排膿されます。
歯状腺から出た膿は排便と一緒に押し流されます。これが痔瘻の初期段階です。
この段階で早めに医師の治療を受けましょう。
オデキは膿が出てしまえば一般的に完治へと進みますが、外気に触れない直腸内なので、医師の治医療無しには悪化するばかりであることを認識しましょう。
放置すると、どんな酷い目に遭うことになるのかを解説しましょう。
感染が広がって、最終的には、膿が大きくなって、歯状腺から肛門腺そして肛門へと通じるほど膿がたまると、膿が排出されるまでの間、肛門周辺の皮膚が赤く腫れ上がってきて、肛門周辺にビリビリ・ヒリヒリとした灼熱感や痛みを感じるようになります。
この痛みは、眠っていても痛くて起きてしまうほどです。
ここまで来ると膿による炎症が最悪状況で、悪寒がして急に39~40℃もの高熱が出たりもします。吐き気を伴うこともあります。
最終的に、肛門側から膿は破裂してしまって、完全に歯状腺から肛門までのトンネルが抜けてしまいます。
膿が排泄されてしまえば、高熱や痛み等の酷い症状は一旦治まります。しかし、完全に膿ができるまで、肛門の方の出口から膿が出続けますので、下着が汚れてしまいます。
しかし、毎日排便をしますので、肛門側の出口が塞がっても、すぐに口が開いて再発します。
また、歯状腺側の口は、空気に触れないのでなかなか口が塞がらず、下痢をすればすぐに感染してしまいます。
医師の治療を受けない限り、膿がたまっては排膿し、また膿がたまる状態を繰り返します。
もちろんその間に、膿はどんどの大きくなって感染源が広がっていくだけでなく、高熱や灼熱感の激しい痛みに悩まされます。
そして、再発する度に、感染源の膿が大きくなっていき、その激しい痛み高熱も長い間続きますし、膿を取り去る手術も厄介になって再発を繰り返すこともあります。
こんな酷い目に遭わないように、少しでもいつもと違う排泄物があったり、トイレットペーパーに見慣れない物がついたときは、すぐに医師に相談することをお勧めします。

3.肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)

肛門部分がかゆくてたまらない事を、「肛門掻痒症」といいます。
主にイボ痔が下着で擦れたり、便や血液・分泌液等が下着に付着したりして、肛門周辺を不潔にしていると起る症状です。
しかし、下痢や軟便が続いて、何度も何度もトイレットペーパーで拭いたり、強く拭いたりすることで、皮膚の摩擦でかゆくなることもあります。
便は、トイレットペーパーで拭き取るだけでは、なかなかきれいにならない物です。そこで、温水便座の温水でお尻を洗うことで、お尻を清潔に保ちましょう。
しかし、5秒以上長い間洗い続けると、肛門の粘膜も洗い落としてしまって、却って炎症を招いてしまう状況になってしまいますので、温水便座の温水で洗いすぎないようにしましょう。

まとめ

いかがでしたか?
痔の原因は、便秘や下痢から生じることが多いので、規則正しい生活、適度な運動で腸内環境を改善することが必須です。腸内で免疫細胞や血液の原料が作られるのですから、腸内の健康が一番痔の原因を作らない秘訣です。
また、腸のコントロールは、自律神経が直轄していますので、ストレスによる自律神経の乱れも便秘や下痢の原因となり、痔の原因を作ることになります。
過労、暴飲暴食、過度のアルコールも睡眠不足を引き起こし、ひいては自律神経やホルモンのバランス、免疫力の低下を引き起こします。
排便のリズムをつくるだけでなく、ストレスの少ない身体に優しい健康的な生活を送るよう心がけましょう。
また、痔になったら我慢せずに、「表1」を参考に、痔の治療専用の市販薬を購入し、早めの痔の治療を試みましょう。
市販薬で症状が1週間以上改善されないとき、出血が止らないときは、肛門周囲膿瘍や大腸癌、大腸ポリープ等、医師の治療無しでは治らない病気である疑いもありますので、早めに医師に相談するのがお勧めですよ。