肥満症

食生活の欧米化と運動不足から、最近では、小学生や乳幼児にまで肥満症の脅威が広がっています。
もはや「肥満」対策の指標として、身長と体重だけで割り出す一般的なBMIだけでは不十分です。なぜなら、BMIは成人用の指標だからです。乳幼児や児童の子供の肥満判定は、カウプ指数・ローレル指数が用いられています。
ここでは、「肥満」の正しい認識と予防について紹介していきます。
平成24年の厚生労働省の調査によると男女ともBMIは三重県がダントツ1位だったのですが、昨今は国を挙げての政策のお陰なのか、その順位は大きく変わっています。
その前に、肥満について、少し解説しましょう。

1.「肥満」には2種類ある!「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型脂肪」の違い

肥満には、「内蔵脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」があり、生活習慣病を引き起こすのは「内蔵脂肪型肥満」だといわれています。
まずは、「内蔵脂肪型肥満」と「上皮脂肪型肥満」の違いを解説します。

(1)内臓脂肪型肥満

生活習慣病の危険が高い肥満です。
「体重は変わってないのに、何だか最近お腹周りや腰回りがポッコリしてきたな」と思ったら、内臓脂肪が付いてきたサインだと思いましょう。内蔵脂肪型肥満の初期症状です。この時点では、BMIが標準値の場合もあります。
このように、BMIが標準でも、内臓脂肪が付きやすい体型になってしまっている人を「隠れ肥満」、あるいは「隠れ肥満予備軍」ともいわれています。内蔵脂肪型肥満の脂肪は、腹腔血行を良くして代謝を高めれば簡単に落とすことができます。言うが安しですが、一旦内臓脂肪型肥満になった方が、運動を始めるのはけっこう大変です。身体が重いし、動きにくいからです。だから、床に落ちた小銭を拾うのがおっくうになったら、危険だと思いましょう。
できれば、「少しお腹ポッコリになった?」と違和感を覚えたくらいからダイエットを始めるのをおすすめします。

(2)皮下脂肪型肥満

皮下脂肪が蓄積するタイプの肥満です。
お腹や太ももにお肉が付きやすいので、その体型の特徴から「洋ナシ型肥満」とも呼ばれています。女性に多い肥満で、女性は「下半身にお肉が付いた」という言葉を言ったり聞いたりしたことが多いと思います。また、妊娠中や授乳期の女性は、赤ちゃんのために栄養分を十分に蓄える必要があるので、女性は男性よりも下半身が太りやすい体質です。そして、栄養分を蓄えるという意味からも、下半身についたお肉は、中々落ちにくいのが特徴です。

2.肥満の指標について

(1)肥満の国際的指標BMI

肥満の指標であるBMI(Body Mass Index)は[体重(kg)/身長(m)²]で基準値が決められており、男女とも標準BMIは22.0と定められています。しかし、BMIの基準で標準の範囲内でも、外見からは少しぽっちゃりだと感じたことはありませんか?
それは、BMIが国際的な指標だからです。
日本人と欧米人の体型の違いから、日本人の場合、とくに女性は、BMIの指標で「標準」だとしても、雑誌でモデルさんの体型を見ている女性達にとっては、安心できる人は少ないかもしれません。そもそもBMIは「生活習慣病になりにくい体形」の国際的な統計指標であり、外見上のスリムかどうかの美的感覚的な指標ではないのです。
ちなみに、BMIは中学生以上の指標なので、昨今広がっている乳幼児や児童等の肥満の指標にはカウプ指数やローレル指数というものが用いられています。
・乳幼児(小学生に上がる前)  : カウプ指数 =10×体重(g)/身長(cm)²
・児童・学童(小学生)     : ローレル指数=体重(kg)/身長(cm)³×10⁷


<引用データ:日本肥満学会>

「肥満」とは、ただ「基準値より体重が重い」というだけではありません。同じ体重でも、筋肉質で引き締まった身体の人と、贅肉がプルンプルンの人がいます。ですから、BMIやカウプ指数、ローレル指数で全てを決めつけることはできません。
とくに、乳幼児については、成長の変化が激しいので、継続的な計測が必要です。

(2)内臓脂肪については、「体脂肪率」を参考に

BMIでは、内臓脂肪型肥満なのか皮下脂肪型肥満なのか区別がしにくいという点もあります。そこで、BMIを補うために、厚生労働省は「体脂肪率」を推奨しています。
厚生労働省発表による平均的な体脂肪率は、以下の通りです。

体脂肪率(%)=体脂肪量(kg)÷体重(kg)×100

・男性:普通は15~20% 肥満は25%
・女性:普通は20~25% 肥満は30%

このデータではアバウトすぎるので、少し詳しいデータをご紹介しましょう。
少し古い資料ですが、2006年10月に株式会社TANITAが日本初の体脂肪の測定できるタニタ体組成計「インナースキャン50」を公開したときに併せて公開された報道資料のデータを引用して作成したものです。
今では、たくさんの種類の体組成計(TANITA)から販売されています。

データ引用:株式会社TANITA 体脂肪率平均表

3.痩せてる人の多い県はどこ?


厚生労働省の「平成 28 年 国民健康・栄養調査結果の概要 」からの抜粋ですが、平成24年の調査では、男女とも三重県がダントツ1位だったのに対し、今回は、各県しのぎを削っています。
平成24年当時、三重県人の生活がクローズアップされました。とにかく三重県人は、坂道が多いので自転車に乗らずに歩くことが多く、また、米油、犬を飼っている人が多い、お酒を飲めない人が多い等の特徴が挙げられました。
犬を散歩させるときに歩き、自転車にも乗らないので、、三重県人はたくさん歩くというのが有酸素運動のウォーキングを無意識のうちにしょっちゅうやっているのが、痩せ体質効果を高めていると話題になりました。また、アルコールは脂肪燃焼率が落ちるし、食生活が乱れるので太りやすいのですが、三重県人はそういう環境にない人が多いようです。
あと、米油効果。
米油は、米ぬかが原料となっている油ですから、動脈硬化を促進する悪玉コレステロールができにくい効果があります。また、三重県特産のひじきも身体に良く、カロリーも低く、肥満抑制効果があるとメディアで騒がれたので、ひじきをたくさん食べた人も多いので鼻いっでしょうか?
このような三重県人の食生活が一時期メディアで騒がれ、ブームになりました。そこで、追いつけ追い越せかどうかは分かりませんが、アルコール・タバコを控え、食生活を改善して、ウォーキング人口が増えたのはいうまでもありません。
その結果が、4年経って、今回のBMI調査に現れたのかも知れません。とくに女性に対しては、昨今の美魔女ブームに乗って、女性のアンチエイジング意識が高まったせいもあるのかもしれません。
体型維持だけでなく、コラーゲンやプロテイン、身体の中からきれいにする岩盤浴や体内フローラ、冷え対策等々、美への意識が高まっている傾向にあるので、BMIの数値の減少が男性よりも大きいのかもしれません。

引用データ:厚生労働省の「平成 28 年 国民健康・栄養調査結果の概要 」
※注意1:この表は、「平成 28 年 国民健康・栄養調査結果の概要」のデータを引用したものです。
平成28年度BMI調査について、熊本県は除外されています。
平成28年4月の熊本地震、8月の台風10号、10月の鳥取県中部地震の影響により調査が困難だったからです。
被災をされた方々に対しては、心からご心痛をお察し申し上げます。

筆者独自の感想ですが、昨今のスポーツジムのお昼の時間帯に高齢者の方々の多いことに驚かされます。
30代~40代よりも50代以上の女性の多いこと!そして、18時になると潮が引くように人がいなくなります。
街の取り組みで、60代以上の会員費の補助があったりする地域もあるのかもしれませんが、ホットヨガや水泳を日常的な運動として取り入れて、「目指せ!痩せた異質!」という健康志向が増加しつつあるようです。

4.アラフォー世代になると一気に太りやすくなるのはどうして?

(1)体重維持には代謝酵素の維持が必須

酵素は、消化酵素と代謝酵素に別れて体内で働いています。30代に入ると体内酵素が減少を始め、40代の体内酵素の量は、赤ちゃんの時の体内酵素の半分程度に減少するといわれています。
酵素は、一般的に消化酵素と代謝酵素が半々で働いていますので、10代や20代の頃は、食べ過ぎても、一晩寝れば体重が戻っていたり、あるいは、1食抜くだけで体重が戻ったり、簡単に体重が戻ることが多かったと思います。これは、代謝酵素の活躍のお陰です。
それが、年齢を重ねて30代後半になると、飲み会の翌日や、ちょっと食べ過ぎた後に、体重が元に戻りにくくなったと感じるようになったことが多いのではありませんか?それは、加齢とともに酵素が減少したことで、体内では生きるために消化酵素維持に重きが置かれ、代謝酵素がどんどん減少してきているからです。また、年齢を重ねる毎に運動をしなくなったのも原因のひとつです。
代謝酵素が減少しているのに、若いときと同じような食生活を続け、なおかつ運動しない生活習慣では、体重増加に拍車がかかるのは当然でしょう。

(2)代謝酵素が減少するとどうして太るの?

代謝酵素が減少するということは、体内のデトックス機能が低下します。便秘になりやすくなったり、消化に時間がかかって胃がもたれやすくなったりするのはそのせいです。体内のデトックス機能の低下は、内臓の機能の低下も引き起こします。内臓の機能が低下すると、その結果基礎代謝(生きるために必要な内臓の働き)の低下を引き起こします。
さらに、運動不足で、筋肉が痩せてしまっては、リンパの流れや血流が悪くなるので、体内のデトックス機能の低下にさらなる拍車がかかります。有酸素運動30分で消費するカロリーと、基礎代謝で消費するカロリーを比べると基礎代謝のカロリーの方が大きいのです。つまり、人間の身体は、生きているだけで、ある程度のカロリーを消費しているのです。
代謝酵素が減少しやすい年齢になったら、身体の代謝機能を維持するために、生酵素のサプリメントを摂取したり、積極的にライフスタイルに運動を取り入れ、規則正しい食生活に改善したり、若いときよりも一層身体に優しい生活を送ることをおすすめします。

(3)適度な運動は基礎代謝アップにも役立つ

リンパの流れに関しては、筋肉に伸縮のみによって体内を巡っています。
心臓から遠くて重力に逆らって血液が送られる部分の血流も、心臓のポンプだけでは力不足なので、筋肉の伸縮の力を借りて送られます。そのために、全身の細胞の酸素や栄養分だけでなく、細胞の排泄物や身体に不要な物質や害のある物質のデトックスには、適度な筋肉が不可欠なのです。
そして、適度な筋肉は、適度な有酸素運動によってつくられるのです。

5.肥満予防のダイエットには過激な運動よりも有酸素運動がおすすめ

ダイエットに一番効果的な運動は、有酸素運動です。
過激な運動よりも、少しゆるめのリズム運動を毎日30分~1時間継続するのが効果的です。ホットヨガやウォーキングが効果的なのはそのためです。とくに時間の無い忙しい方には、ながら運動の有酸素運動がおすすめです。通勤途中に歩くとき、正しい姿勢で大股で早歩きをするだけでも、効率的な全身の筋肉を使った有酸素運動になります。
また、家事を何時もより大きめの動作で丁寧に念入りにやってみましょう。全身運動になって、数時間の有酸素運動を行っているようなものです。

まとめ

規則正しい生活と十分な睡眠、栄養バランスのとれた規則正しい食事、そして適度な運動。これが、人の身体に最も優しい生活です。
太ってしまったら、健康のためにもダイエットは必要ですが、絶食を伴う過激なダイエットは、精神的にも悪影響を与え、筋肉も痩せて体内のデトックス機能を低下させ、健康を害してしまいます。
一定の栄養素を全く体内に入れないダイエット法も、身体に悪影響を与えます。ホルモンバランスや体内の水分バランスを乱すこともあります。これらのバランスが乱れることは、太る体質へと身体を導くだけでなく、心身に悪影響を及ぼす原因にもなることもあります。
また、普段運動をしない人が、いきなり過激な運動によるダイエットに励むのも逆効果です。筋肉を痛めてしまう原因にもなりますが、それによって生じる身体の苦痛も過度なストレスとなり、睡眠や健康に悪影響を与えてしまうことにもなりかねません。
身体に優しい規則正しい生活をして、身体のデトックス機能を高め、基礎代謝をアップさせ、健康的な身体作りに励みましょう。身体の中から綺麗になった健康な身体は、あなたにとって一番美しい身健康美を作り出すのです。
肥満予防は健康な身体を取り戻す第一歩です。
ただし、真面目にダイエットをしているのに、どうしても太ってしまう、あるいはどうしても食欲が収まらず、それが我慢の限界を超えるようなら、一度医師に相談することをお勧めします。身体の病気や精神の病気である可能性もあります。
そのような場合は、早めの対策が必要だからです。