ヘパリン類似物質

「ヒルドイドを美容目的で処方してもらうのはタブー」というニュースが氾濫しています。美容クリームとして皮膚科でヒルドイドを入手しようとする方が多数いらっしゃるようです。
悪意はないのでしょうが、ヒルドイドは医療用医薬品です。医師が患者さんを診断し必要に応じて処方されることで初めて入手することができる医薬品です。
いまのままだと、アトピー性皮膚炎の患者さんや皮脂欠乏症などで本当に必要な方にまでご迷惑がかかります。近い将来、保険適用から除外されそうな心配さえあります。美容目的での入手は、違法です。
早急にお止め下さい。ヒルドイドと同一成分の商品は、市販でも販売されてますからドラッグストアやインターネットでお買い求め下さい。

■ヒルドイドについて

ヒルドイドが発売されたのは、1954年です。もう60年以上前にさかのぼります。発売当初は、血行促進剤の薬効でした。
ヒルドイドに含有されているヘパリン類似物質ですが、名前の通りヘパリンと類似した物質です。
ヘパリンは、抗凝血薬として現在も人工透析中に血液が固まるのを防ぐ働きなどで利用されています。
ヒルドイドは、抗凝血効果と血行促進効果で長らく利用されていましたが、1990年に皮脂欠乏症の効能を追加、薬効分類を血行促進・皮膚保湿剤と改めました。

■ヘパリン類似物質

hepatic(肝臓の)という語源からheparin(ヘパリン)という言葉が命名されたそうです。ヘパリンは肝臓の肝細胞に多く存在しています。肝臓には無数の毛細血管と大量の血液が貯蔵され、この臓器で血液が固まるとあらゆる生体内の臓器が不全に陥ります。血液が固まらず円滑に血流を循環させる手助けをしている物質こそヘパリンなのです。

前述したようにヒルドイドの発売元のマルホが研究開発の末、ヘパリン類似物質に高い保湿効果がある事を見出し、30年近くにわたって皮脂欠乏症やアトピー性皮膚炎の治療に多くの医療現場で利用されています。
ヘパリン類似物質は、「保湿」「血行促進」「抗炎症作用」の3つの働きがあり、乾燥肌に優れた効果があります。
この3つの働きは、肌の内側から新陳代謝をうながすため、一時的な保湿とは違い、乾燥肌の根本的な解決に繋がる成分だということが分かります。

ヘパリン類似物質含有の市販薬

最近では一般用医薬品にも、ヘパリン類似物質をヒルドイドと同等の3.0%含有した商品が多く発売されています。
小林製薬のアットノン、Saiki(さいき)、ロート製薬のヘパソフト、ノバルティスファーマのHPシリーズ、それと
新新薬品工業のピアソンHPシリーズなどがあります。

なかでもピアソンHPシリーズは医療用医薬品のビーソフテンと同一商品で多くの乾燥肌の方よりご愛用を頂いています。
ビーソフテンはヒルドイドのジェネリックとして数多く処方され、本数ベースでは圧倒的にヒルドイドを上回ります。

 

■まとめ

ヘパリン類似物質は、保湿目的として30年近く医療現場で使われ、とても安全の高い薬剤です。最近では一般用医薬品でも同等の商品が手軽に入手できるようになりました。一部目の周りなどを除けばお顔にも使用できます。
乾燥や粉吹きなどでお困りの方は是非、一度お試し下さい。およそ一週間程度で効果を実感できます。

※保湿剤はヘパリン類似物質以外にもあります。ご自分のお肌にあってるのか?どうかは、相談の上、お買い求め下さい。

The following two tabs change content below.
香川県観音寺市の創業100年になる福田薬局の三代目薬剤師。 ドラッグストア業界に30年従事、チェーンドラッグと日々戦い続ける毎日をおくる。2013年よりEC事業にも本格参入。2店舗の実店舗と7店舗のネットショップを運営。 ランチェスター戦略が大好きなミドルエイジ!