「ロコモティブシンドローム」とか「ロコモ」という言葉を聞いたことがありますか?
ロコモティブシンドロームは通称「ロコモ」と呼ばれています。このロコモが、自立支援・要介護状態の引き金になってしまう可能性が非常に高いというのはご存じでしたか?
そこでこの記事では、「ロコモティブシンドローム」について詳しく解説します。
1.ロコモティブシンドロームとは?
骨・関節、そしてそれを包み動かしている筋肉のことを運動器(ロコモティブオーガン)というのですが、運動器に何らかの障害を起こすと運動機能障害を引き起こしてしまいます。
運動器に機能障害が起きると、歩く・動く度に痛みが生じて、少しずつ日常生活に支障をきたし、この状況をロコモシンドローム、通称「ロコモ」と呼ばれているのです。このロコモが進行していくと、手・腕・膝・足腰の痛みによって、動くのが億劫になっていき、余計に運動器の機能が衰えて、最終的には自分で身の回りのことができなくなります。
40歳以上のロコモの可能性のある人は、全国に47,000人もいるといわれています。ロコモの状態から、家に引きこもり、精神を病んで、それが原因で気力や体力も喪失し、介護状態の引き金になるという、負の連鎖を引き起こしているともいわれています。
「病は気から」というように、「健康な身体に健康な精神が宿る」ともいわれています。
すなわち、心と体は表裏一体ですから、メタボとロコモと認知症は合併症状を起こしやすいという研究発表(2009年 関節疾患の東大特任教授 吉村典子医師)もあるくらいです。ちなみに、ロコモよりもさらに広い概念で、65歳以上で、運動器の疾患による転倒リスクが高まって要支援・要介護状態になりやすい状態を「運動器不安症」という言葉もありますので間違えないようにしましょう。
2.ロコモは要介護の引き金になる?
ロコモの原因は、2種類あるのです。
1つ目は、身体の運動器自体に疾患が生じて、身体が自然と動かしづらくなっていく場合です。
2つ目は、加齢に伴って運動器が少しずつ機能不全を起こしていって、身体が動かしづらくなっていく場合です。
厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査の概況(PDF)」によると、介護が必要となった原因を調査した結果は以下の通りです。
原因を調査した結果は以下の通りです。
要支援になった原因の1位と3位は、運動器の機能障害が引き金ですから、ロコモが原因といえます。
また、要介護の原因2位の脳卒中の後遺症(脳の神経細胞の壊死)によって、運動器に機能障害を引き起こすので、やはりロコモです。
これだけでも、如何に介護の引き金にロコモが多いかがおわかりかと思います。
また、加齢によってかかってしまう変形関節症や骨粗鬆症による運動器の機能障害(関節や骨の異常)のロコモも多いのです。
もはやロコモは国眠病ともいえるでしょう。
このように、ロコモは要支援や要介護の引きがねになり安いので、高齢者がなる病気と思われがちですが、1つ目の原因によって運動器に疾患が生じた場合は、40代といった若い世代でも、要支援・要介護状態になる可能性を否定できません。
3.40代から危険が迫る!? ロコモも健康寿命短縮の大きな要因?
先に書いたように、ロコモは要支援・要介護の引き金となります。
寝たきりにならずに元気に生活できる「健康寿命」を延ばすために、メタボや成人病に世間の注目が集まっていますが、ロコモも健康寿命を短縮させる大きな原因だという自覚が必要です。高齢の方だけでなく、40台半ばを過ぎると、運動不足や肥満、生活の乱れは、身体に様々な異常を引き起こし始めます。
また、40代という早い年齢でも、ストレスによってホルモンバランスが崩れて、骨粗鬆症になる人も少なくありません。骨粗鬆症は骨折しやすくなる病気ですから、転倒骨折によって動けなくなるリスクが高まるので、ロコモの原因のひとつです。
最近では、ストレスで20代後半という若い世代で、月経不順から閉経になってしまう人もいるくらいです。女性の場合は、閉経すると、女性ホルモンが激減するので、例え20代でも更年期や骨粗鬆症の危険はあるということです。
そして、骨粗鬆症は、骨折しやすくなって運動機能が大きく低下しマスので、ロコモの大きな原因のひとつです。
だから、掘る恩バランスを崩れの原因となるストレスは、間接的とはいえ、ロコモの大敵といえるでしょう。
三大成人病の後遺症で手足の運動器に障害が起ると、これもロコモです。関節関係の病気、脊椎緒病気、腰痛、神経痛、リュウマチ・・・etc.整形外科の多くの病気がロコモに該当します。軽いところで、四十肩・五十肩も、自分で洋服に袖を通せないほど酷くなったら、ロコモです。
骨粗鬆症による骨折の恐怖や、関節痛や腰痛症、膝関節症や変形症、神経痛の痛みを恐れて、用心して動くので全く運動をしなくなってしまい、その結果、運動不足が原因で筋肉が痩せて筋力の衰えからますます動かなくなる、この状況はまさにロコモの負の連鎖ともいえます。
4.ロコモチェックをしてみよう
年齢とともに「運動をしなくなった」、「足腰が弱くなった」と感じる人は多いでしょう。
では、どの程度まで運動機能が落ちたらロコモなのでしょう。
下記6つの項目をチェックしてみましょう。
1.15分以上歩くときつい
2.2kgの物を持って歩くのが辛い
3.掃除機を持って階段を上がる、布団の上げ下ろしが辛い
4.家の中の小さな段差で躓くことが増えた
5.階段の上り下りには手すりを持っていないと不安
6.何もつかまらず、どこにも寄りかからずに片脚立ちで靴下をはけない
7.気付いたら歩くスピードが遅くて、横断歩道を青の間に渡りきれずに走ったことがある
上記の項目に1つでも当てはまったら、あなたはもはやロコモ予備軍かもしれません。
そう思った人は、整形外科の医師にすぐにでも相談しましょう。ロコモの予防や改善は、早い方が効果は高いのです。
医学の進歩で寿命が高くなった今、最後の人生を痛みや苦痛を抱えて暮らすのは、人生の希望を失いがちです。会社の定年退職後、子育てが終わって子供が独立した後に、新たな人生の始まりとする事ができるほど、人生は長いのです。
だからこそ、寝たきりにならずに、痛みの少ない、楽しいアクティブな生活を送れる健康寿命を延ばしたいですよね。
そのためにも、規則正しい生活、栄養バランスのとれた食事をとって、適度な運動に良質な睡眠といった、身体に優しい生活を送りましょう。
5.ロコモ予防・改善のために今から始めたい運動
一般的に、ロコモなんて関係ないと思ってしまう年代、30代後半から次第に運動不足になりがりです。
日頃の運動不足から、早い人は40代半ばにはロコモの予備軍になるか膿性が高まっていきます。
(1)骨粗鬆症にならない規則正しい食生活
腰痛や膝関節痛にかかりやすい人がロコモ予備軍になりやすいので、それらの疾患にならないように、しっかりと筋肉をつけ、骨粗鬆症にならないように気をつけましょう。
骨粗鬆症にならないためには、ストレスの少ない規則正しい食生活が基本です。
(2)適度な運動
週に2回以上運動をしない人は、将来ロコモになってしまうリスクが2倍に跳ね上がるといわれています。
適度な筋肉をつけるためには、ウォーキングやジョギングといった有酸素運動が有効ですが、普段運動しない人が急に激しい運動をしても、却って関節や足腰を痛めて逆効果です。
<立ったり座ったり、バランスを保つ運動>
そこで、運動に慣れていない人は、椅子に姿勢良く座って、胸に手を交差させ、立ったり座ったりを5~10回行い、それを毎日1日3セット位のペースで続けてみましょう。
このとき、お尻を下ろすときに息を吐いて、立ち上がるときに息を吸うといった感じで、ゆっくり行うのがお勧めです。
壁やテーブルの横に立って、ふらついてもすぐに何かにつかまれるような場所で、片脚立ちをできるまで行ってみましょう。片脚最低1分ずつ、3分できるようになれば安心です。
既にロコモ予備軍になってしまっている人は、バランスをとるのが難しい可能性もあるので、初めのうちは片手で何かにつかまったり、テーブルの横でテーブルに手をついて片脚立ちをしてみましょう。
これらの運動を無理のない程度に毎日続ける事が重要です。
<筋肉を伸ばす運動>
バンザイをして手を組んで、手の平を上にして、つま先立ちで身体を思いっきり伸ばしましょう。
つま先立ちは、ふくらはぎの運動を鍛える運動になります。
バンザイをして手を組んで手の平を上にして身体を伸ばすことで、手をできるだけ耳の後ろにするよう頑張ることで、背筋も伸び、背筋にも腹筋にも力が入ります。
5~10秒で手を下ろし踵も下ろして、力をぬきましょう。これを3セット行います。
また、腰に両手を当てて、大股で一歩前に出て、前に出した足の膝を曲げながら身体の重心を前にかけていきつつ、後ろの足を曲げないように気をつけながら、腰を下げていきます。これも無理をせずできる範囲で行いましょう。膝や腰に痛みを感じたら即中止です。
可能な限りですが、できれば1回に5~10回をワンセットに、1日2~3セットがお勧めです。
また、ストレッチやヨガ、水中運動、痛みや無理でないなら、エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を上り下りして、日頃から姿勢良く少し大股で歩く習慣をつけましょう。
まとめ
いかがでしたか?
骨は生まれ変わるのに7年もかかるといわれていますので、骨の新陳代謝はむずかしいですが、筋肉は48日で生まれ変わるといわれています。
関節に関しては、140年かかるといわれていますので、一旦崩れた関節は元に戻らないと思ったほうが良いでしょう。
骨や関節を守るのは、筋肉です。
筋肉は、48日で生まれ変われるのですから、気がついた今からが筋肉の鍛え時です。
筋肉は、少しずつでも、いくつになっても鍛えられるといわれています。
ただし、これは痛みの無い、運動器に目立った機能障害が無い状態でです。
40代・50代の痛みの少ないうちから、適度に筋肉を鍛え、腹筋背筋をしっかりつけて、年齢を重ねても姿勢良く歩けるように若いうちから身体を鍛えましょう。
背骨のS字カーブが保たれていれば、腰痛にもなりにくく、立っているだけ、歩いているだけでも、自然と腹筋背筋が鍛えられます。
それだけでなく、骨盤が傾いていない場合、腰椎や股関節、膝に無理な負担がかからないので、ロコモにもなりにくいのです。
それだけで無く、姿勢が正しいだけで、内臓も圧迫されないので、血流も良くなって、内臓年齢が若く、メタボにもなりにくく、体も心も若く元気でいられます。
痛みに悩まない健康的な老後を送るためにも、痛みのないうちから適度な運動週間と規則正しい食生活を習慣づけておきましょう。