不眠とは、寝付きが悪い、中途覚醒、早期覚醒の3種類がありますが、日本では5人に1人は不眠で悩んでいるといわれています。
不眠の症状は、20代~30代で始まり、年齢を重ねるほど酷くなるといわれています。
そして、男女比では、女性の方が圧倒的に多いといわれています。
この記事では、不眠について解説します。
1.不眠のタイプ
(1)寝付きが悪い
布団に入っても、30分~1時間経過してもまだ眠れていない状態で、「寝起きが悪い」といいます。
寝る前の1時間で睡眠環境を整えると寝付きが良くなります。
寝る前には、脳がリラックスした状態でないと、脳が睡眠態勢に入れません。
寝る直前までスマホやパソコンをみていたり、興奮したり、身体が温まりすぎていたり、胃の中に食べ物が残って胃腸が活発に動いていると、交感神経を刺激して、寝付きが悪くなりますので、気をつけましょう。
(2)中途覚醒
朝起きるまでに何度も目が覚めるので、熟睡感が無く朝から身体が重く昼間も眠気が続きます。
寝酒を飲むと寝付きが良くなるといわれていわれていますが、寝付きが良くてもアルコールは、深い眠りには入れずに、眠りが浅いままなので、途中で目が覚めやすくなります。
寝る前に水分をたくさんとって夜中に尿意をもよおしたり、あるいは頻尿、むずむず症候群のような足の痒みや痛みによって目が覚める人もいます。
中途覚醒する人は、起きた時の時間を気にして見て下さい。
就寝後2時間~3時間、4時間~5時間といったふうに起きる時間が決まっているのではありませんか?
そのような人は、寝入りばなには深い眠りに入れているのに、浅い眠りの時に覚醒しているのですから、覚醒する原因を考えてみましょう。
頻尿やむずむず症候群等心当たりがある場合は、その原因を解消すると眠れるようになりますので、医師に相談してみましょう。
就寝後3時間未満で起きてしまう人は、寝付きが悪くて寝入りばなに深い眠りに入れていないので、睡眠サイクルに狂いが生じています。
寝る前の睡眠環境を整えても難しい人は、不眠症になる前に医師に相談しましょう。
(3)早期覚醒
起きる時間2時間ほど前に目が覚めてしまう人は、睡眠時間が短くなって寝不足になりがちです。
ただし、年齢を重ねて、ある程度の年齢になると、早く目が覚めても、昼間に眠気を伴わず、便秘や体調不良が起きない事もあります。
そのような状態なら、短い睡眠時間でもあなたの身体には合っている睡眠時間の場合もあります。
年齢を重ねると、その分運動もせず身体も疲労しなくなるので、身体のメンテナンスに若いときほど時間が必要なくなった、という場合が多いのです。
しかし、昼間の酷い眠気や体調不良を伴う場合は、体調を壊す前に医師に相談しましょう。
(4)隠れ不眠
十分な時間眠っているので、本人が気付いていないことが多いのですが、寝不足感が翌朝残っている場合は、身体のメンテナンスが不十分なので、身体は寝不足を訴えています。
人の身体は深い眠りの時にメンテナンスが行われますので、浅い眠りばかりでは身体に疲労が蓄積するのです。
浅い眠りの時に記憶の整理はなされます。
記憶の整理だけして、脳を休めないと、脳の疲労は蓄積するばかりです。
だから、「十分眠ってるのに寝ても寝ても眠い」と思う人は要注意です。
隠れ不眠の多くは、ストレスが原因です。
睡眠時間だけはたっぷりとっているので、眠気が襲っても、怠けているとか、気合いが足りない、と錯覚してしまいがちです。
そのように自分を責めるのではなく、どうしても眠いときは30分ほど仮眠をとってみましょう。
本格的に横になるのでは無く、テーブルやデスクにうつぶせ寝がお勧めです。
うたた寝をする前にカフェインを飲むのがお勧めです。
カフェインは効果が出るまで30分ほどかかりますので、ちょうど目が覚める時間にカフェイン効果が現れて、すんなり目が覚めます。
これで気分がスッキリするなら、あなたのその眠気は寝不足が原因です。
十分睡眠時間をとっているなら、隠れ不眠で深い眠りには入れていない状況ですから、規則正しい食生活を心がけ、寝る一時間前から睡眠環境を整え、脳をリラックスさせても隠れ不眠状況が続くなら、早めに医師に相談しましょう。
放っておくと心の病に突入してしまうこともあります。
2.本来の良質な睡眠とは?
(1)良質な睡眠とは?
良質な睡眠とは、寝入ばなに深い眠り(ノンレム睡眠)に3時間ほど入り、その後浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)を90分程度のサイクルで繰り返し、眠りが浅くなってきたところで目覚めると心地よい目覚めが体験できます。
寝付き良く眠りに入って、ノンレム睡眠とレム睡眠の睡眠サイクルを繰り返すことができれば、人は自然に良質な睡眠がとれて、心地よく目覚めるようにできているのです。
良質の睡眠
=[寝入りばなの深い眠り3時間]+[(「レム睡眠」「ノンレム睡眠」)90分]× X
お休みの日に、目覚ましをかけずに好きなだけ眠ってみましょう。
目が覚めたときの時間で睡眠時間を算出してみましょう。
寝付くまでの時間と目が覚めて身体が起き上がるまでの時間の誤差を考えて、あなたの身体が欲している良質な睡眠のXを求めて、あなたの身体が欲している良質な睡眠時間を見つけだしましょう。
そして、起きなければならない時間から逆算して床につくようにするよう心がけましょう。
(2)脳の睡眠システム
ここで、少し脳の睡眠システムについて解説しましょう。
脳は、眠りに入るには睡眠ホルモン(メラトニン)が欠かせません。
この睡眠ホルモンは、朝起きて、14時間ほどして分泌を開始するので、毎日同じ時間に目覚めるように、規則正しい生活を心がけましょう。
また、体内時計の1日は25時間であり、地球の1日24時間よりも1時間多いので、毎日少しずつ体内時間がずれていきます。
しかし、人の脳は太陽の光を浴びると、体内時計をリセットしますので、毎朝15分以上太陽を浴びると体内時がリセットされて、決まった時間に眠くなるようになります。
カーテン越しの太陽光でも大丈夫です。
風水的にキッチンやダイニングは東向きが良いというのは、朝からご飯を食べながら太陽光を浴びることができるからだともいわれています。
さて、目が覚めると睡眠ホルモンが遮断され、幸せホルモン(セロトニン)が一斉に分泌されて全身の神経細胞に身体を動かすように指令を出すのですが、この幸せホルモンは目覚めて14時間ほどすれば睡眠ホルモンに変身し、脳を眠らせる働きをするのです。
人間の脳は、過度のストレスを感じるとストレスホルモンが分泌され、身体に悪影響を及ぼすのですが、幸せホルモンは、それを防御するために、脳内でストレスホルモンが増え始めるとストレスホルモンと合体して、中和して消滅させる働きも担っています。
つまり、昼間のストレスが多いと幸せホルモンがたくさん消費されてしまうので、夜眠るべき時間がきても、睡眠ホルモンに変身すべき幸せホルモンが不足して、夜寝付きが悪くなってしまうのです。
「ストレスは睡眠の敵」というのはこのためです。
また、睡眠ホルモンが十分にあっても寝る前に交感神経が活発なままだと、睡眠ホルモンがα派を脳内でつくり出すことができません。
だから、寝る前に脳をリラックスさせなければならないのです。
(3)体温が眠りの深さを調節してる?
また、人の身体は、体温を下げることで、どんどん深い眠りに入っていきます。
このとき、体温を下げるのが寝汗です。
そしてある程度深い眠りに入ったら、体温が下がりすぎないうちに、今度は体温を上げて眠りが浅くなります。
さらに、ある程度体温が上がったら、目覚める前に体温が下がり始めてまた深い眠りに入ります。
このように、深い眠りと浅い眠りを繰り返し、最も浅い眠りの時に目覚めると、体温も十分に活動しやすい温度になっていますので、すぐに動けて心地よい目覚めを体験できるのです。
反対に、深い眠りの時に無理矢理起こされると、気分が悪くて身体が動かないという経験をしたことがありませんか?
身体が動く体温になっていない低体温のときに無理矢理起こされるので、身体が動くのに十分な体温になるまで数分かかるから、その間からだが動かないのです。
でも、脳は目覚めて動こうと、超特急で身体の体温を上げようとするので、身体は急激に血流を上げて体温を上げて準備を始めますが、何しろ無理矢理ですから、血管にいきなり大量の血流が始まるので、脳の血管がビックリして、酷い頭痛やムカムカが起るのです。
呼吸だって低体温時の呼吸時に、いきなり大量の酸素を身体が求めてくるので、まるで息を止めていたかのような錯覚を起こすのです。
こんなことにならないように、快適な目覚めを体験するためにも、自分の快適な睡眠時間を知ることが重要ですね。
3.理想的な睡眠環境とは?
就寝時間の30分以上前にお風呂から上がっているようにん心がけましょう。
入浴は、心身のリラックスに役立つので、睡眠環境作りにも効果的なのですが、お風呂で身体がポカポカ状態のままでは、体温が十分に下がりきれずに深い眠りには入れないまま目覚めてしまうのです。
お風呂から上がったばかりのポカポカ状態で眠ると、体温が下がりきる前に寝汗で冷やっとして目が覚めてしまうからです。
冬でも布団を着込みすぎたり電気毛布の温度を上げすぎては、首回りにびっしょり汗をかいて、着替えている間にすっかり目覚めてしまったなんて経験をしたことも多いと思います。
また、夜食・アルコールも睡眠に悪影響を及ぼします。
内臓が活発に動くと交感神経が活発に活動しますので、副交感神経が優位にならずに眠れなくなるからです。
アルコールを分解するのには個人差がありますが、5~7時間ほどかかり、その間肝臓が大活躍しているからです。
また、アルコールは利尿作用もありますので、夜間にトイレで目が覚めやすくもなります。
だから、脳がリラックスするには、睡眠時間の30分~1時間前にお風呂から上がって、アロマの香に包まれて、少し暗めの暖色系の明かりの中で、リラックスするのがお勧めです。
集中して最後まで読んでしまうような本ではなく、いつでも止められるような緩めの内容の好きな本を読んだり、鼓動のようなリズムの音楽を聴いたり、座禅やヨガをしたりするのもお勧めです。
反対に、反省や考え事は、交感神経を活発にするので、翌朝早く起きてから、あるいは寝る1時間前には終わらせておきましょう。
どうしても考え事から解放されないときは、大好きな人に抱きしめてもらうと効果的です。
オキシトシンという、心が落ち着く愛情ホルモンが分泌されるからです。
自分で自分を抱きしめたり、抱き枕を好きな人だと思って妄想しながら抱きしめるのでも同じ効果があります。
脳が錯覚を起こして、オキシトシンをたくさん分泌してくれるからです。
寝る前に楽しい事を連想するような言葉をたくさん唱えるのも効果的です。
幸せホルモンが分泌されて脳がリラックスします。
先ほど脳の勘違いを利用する方法としては、笑顔をつくるリラックス法もあります。
脳が何か嬉しいことがあったのかと思って幸せホルモンをたくさん分泌するからです。
「嬉しいな!→幸せホルモン分泌→表情筋が動いて笑顔をつくる」という一連の動作を
脳がワンセットとしているので、笑顔を先につくれば幸せホルモンを慌てて脳が分泌するというわけです。
これもあまり効果が無いというときは、最終手段です。
胸に手を当てて、鼻で息を軽く吸って、口から続く限りゆっくりと息を吐きます。お腹と背中がくっつくような感覚で行いましょう。
これを何回かすると頭が真っ白になって、脳を占めていた様々な考え事がいっぺんに消えてしまいます。
そこがチャンスです。
笑顔をつくって、自分を抱きしめて、楽しい事をたくさん連想して、脳内をリラックス状態にしましょう。
このとき慌ててはだめですよ。ゆっくりとリラックスです。
4.眠れないときは?
眠れないこともストレスです。
羊の何億匹まで数えても眠れないときは眠れません。
そんなことをする事さえ、既に大きなストレスです。
ますます眠れません。
だから、どうしても眠れないときは、寝室から出てしまいましょう。
眠れない日が続いて、朝までずっと布団にしがみついていては、時々ウツラウツラしたとしても、そのストレスが先立って、トラウマになってしまうこともあります。
「寝室=眠れない部屋」と脳がインプットしてしまうのです。
そうなっては、後は不眠症へまっしぐらです。
寝室を別の部屋にする環境に無い方の方が多いでしょうから、思い切って起きて、別の部屋に行って、蜂蜜入のホットミルクや、心を落ち着けるノンカフェインの温かい飲み物を飲んでみましょう。
ホットミルクや蜂蜜は睡眠を促進する働きがあります。
ヒーリングミュージックを聴いてみたりするのも良いでしょう。
起きてる間にカフェインを摂取したり、アルコールを飲んだり、パソコンで仕事をしたり、携帯の画面を見たりしては、ますます目が冴えて「朝まで貫徹コース」へと突入してしまいます。
気をつけて下さいね。
そもそも人の身体は、眠るべき時間に起きているとくたびれて眠くなるようにできています。
どんなに興奮していても、クタクタに疲れては眠くなります。
しかし、それを我慢していたら、どんどん交感神経が活発になるので、きつくなったり、少しでも眠気を感じたら、すぐに布団に戻りましょう。
きっと眠れます。
でも、そういう日が何日も続くと体調を崩すので、早めに医師に相談するようにしましょう。
健康な人は、寝不足の日の夜は、眠れるものなのです。
それができないのは、不眠症かその予備軍だからです。
まとめ
人は、眠っている間に心身のメンテナンスを行いますので、不眠は様々な体調不良の原因になります。
また、眠っている間に、免疫やホルモンも作られます。
自律神経を整えるのも眠っている間です。
機械もメンテナンスを行わずに使用続けると、故障が起きるように、人の身体や脳も、メンテナンス不足だと故障を起こします。
熟睡できれば、ストレスのストレスホルモンだって、身体に害のあるものとして、眠っている間に自然に除去されてしまうのです。
「イヤなことがあったときはふて寝すべし」これは案外効果的なのですよ。
うたた寝は、短時間でも思った以上に深い眠りに入るので、浅い眠り時に記憶の整理も行われ、深い眠りの時にストレスホルモンも除去してくれます。
その結果、怒りが収まったり、悲しみや嫌な気持ち、負の感情も薄れているというわけです。
また、不眠はストレスの蓄積や自律神経やホルモンバランスを乱す原因にもなります。
そして、心の病も引き起こしやすくなります。
しかし、不眠の原因はストレスばかりではありません。
睡眠時無呼吸症候群や他の深刻な病気が隠れている場合もあります。
寝不足が続く人は、早めに睡眠外来を訪れてみましょう。