スマホやパソコンを長時間使う人が増えて、3人に1人はドライアイになる時代になりました。
そして、ドライアイは現代病ともいわれるようになりました。
そのため、2016年に「ドライアイ」の診断基準が変更されたくらいです。
そこで、現代病ともいわれている最新版の診断基準に沿ったドライアイについて、詳しく解説します。
1.2016年に改訂されたドライアイの診断基準とは?
(1)ドライアイの診断基準の歴史
涙は、目の表面を覆って眼球を守る働きがあります。
日本で初めてドライアイの診断基準ができたのは、1995年です。
その後パソコンの普及により、ドライアイの自覚症状を訴える人が増えたことで、2006年にドライアイの診断基準に改定が行われました。
そして、さらにスマホの普及が進み、2回目のドライアイの診断基準の改定が2016年に行われたのです。
この2016年の最新のドライアイの診断では、自覚症状だけでなく、涙の膜の安定度を測定することでドライアイを診断します。
角膜に損傷や炎症が無くてもドライアイの診断をして貰えるようになったのです。
(2)最新基準のドライアイとは?
まず、2016年の最新版ドライアイ診断基準で重要な「涙の膜」について解説します。
涙の膜は、油層、液層、ムチンの三層からできていて、角膜を守っています。
角膜の表面を角膜上皮細胞といって、涙の膜が途切れると、この角膜上皮細胞が剥がれて、角膜に傷や炎症が起ってしまいます。
過去の診断基準では、この角膜の傷や炎症が無い場合は、自覚症状があってもドライアイとは診断されませんでした。
涙の分泌が少なめといった体質的なことのような診断で、「目が悪い人は涙の分泌が少なくて、目が乾燥しやすい」なんて一般論で片付けられることもありました。
確かにドライアイの一因ではありますが、涙の量よりも三層構造の涙の質が重要だったのです。
その結果、原因不明の目の違和感に悩む人が増える一方でした。
市販の目薬には、眼科で処方されるドライアイ専用の目薬に含まれるドライアイに有効な成分が入っているものが少ないので、今までドライアイ予備軍なのに「涙の分泌量が少ない」と診断されていた人は、市販の目薬では改善されずに、目の不快感と仲良く付き合っていくしか無かったというわけです。
ところが、2016年の診断基準変更によって、検査用の目薬をさして、涙の膜を染色し、瞬きをして5秒以内に涙の3層の膜が歪んだり壊れたりした場合は、涙の分泌量が減っていて、角膜が傷つきやすい状況にあることで、ドライアイと診断されるようになりました。
順天堂大学のカルテの調査によると、この改訂版ドライアイ診断基準によって、「ドライアイ」と診断される人が3割増しとなったのだそうです。
(3)ドライアイはまだまだ課題が一杯?
ちなみに、まだまだドライアイの涙の層が壊れる詳しい原因はわからないことも多く、涙の分泌腺に原因があるのではないかとか、目の痛みは神経を圧迫するからだとか、さまざまな説があります。
また、涙が壊れやすいというドライアイ状態を放置すると、角膜の炎症で視力の低下を引き起こすだけでなく、肩こりやウツを引き起こす原因となるともいわれています。
2.市販の目薬ではドライアイは治らないのはなぜ?
市販の目薬には、ドライアイに有効な成分が入っていません。
涙の成分に重要なのは、涙の表面の油層です。
この油層が涙に膜を張って、目を乾燥しにくくさせているのです。
市販の目薬は、ビタミン等の栄養分や目に有効な成分が含まれた目の水分補給のようなものです。
最近では、防腐剤の入っていない涙に似た人工的な目薬もありますが、何分人工液ですし、1種類の目薬で、涙の三層構造を再現できるはずもありません。
ですから、エアコン等で乾燥した部屋にいたり、瞬きが少なくなって目が空気にさらされている時間が増えてしまうと、市販の目薬では、あっという間に目の乾燥は元通りです。
その結果、目が乾燥しやすい人は、市販の目薬をたくさんさしてしまいがちです。
ところで、市販の目薬をさすと視力が低下したという人がいると聞いたことがある人もいると思います。
これは、頻繁に目薄里を指すことで、市販の目薬に含まれる防腐剤が、目に悪影響を与えているからです。
こういうわけで、市販の目薬では、ドライアイが治らないのです。
一方、眼科で処方された目薬には防腐剤が含まれていないので、冷蔵庫で保管が必要なものもあります。
それに、眼科で処方された目薬は、数種類の目薬を決まった順番に点眼します。
これは目薬によって、涙の三層構造を再現し、涙の役割を果たしているのです。
油層の代わりの点眼薬もあります。
だから、ドライアイの自覚症状を感じたら、早めに眼科の医師に相談しましょう。
3.ドライアイのセルフケア
(1)涙の分泌を多くするための栄養素を摂取
アントシアニン(ブルーベリーやビルベリー)やビタミンA(緑黄色野菜)が、目に良いと知られています。
また、角膜を守るムチン層の分泌を促すEPA(オメガ3脂肪酸)も重要です。
EPAは青魚やエゴマ油、栗に含まれています。
もちろん、食事から積極的に摂取することも大切ですが、食事だけでは十分に摂取できないので、サプリメントの服用が効果的です。
(2)ドライアイに効果の高い市販の目薬購入の注意点
・ビタミンA配合
ドライアイは疲れ目から起きることも多いので、疲れ目に効果の高いビタミンA配合の目薬の使用もお勧めです。
・防腐剤不使用
防腐剤が入った目薬を頻繁に指しすぎると角膜に悪影響を与えます。
・目の充血に効果がある目薬には要注意
目の充血を改善すると謳っている血管収縮剤の含まれた目薬は、充血が改善されるというよりは、一時的に血管が収縮して充血を改善したように見えただけです。
治療効果を期待できるものではありません。
目が充血したということは、疲れ目の危険信号ですから、本来なら、すぐに目を休ませないといけないのです。
その際に、目の充血に効果のある目薬をさしておくと、自然治癒力の手助けとなるというわけです。
だから、目の充血に効果がある目薬をさして、目を休ませること無くそのまま目を酷使していては、目薬効果が切れた時には、目の充血が悪化してしまうこともあるのです。
・涙に近い成分配合
人口涙液ともいわれている目薬は、防腐剤が入っていないので、目に刺激が少なく、目に自然な状態で潤いを与えてくれます。
・ヒアルロン配合目薬が効果的
ヒアルロン酸は、ドロンとしていますので、涙の油層成分と同じ効果があって、涙の蒸発を防ぎます。
また、剥がれた角膜上皮細胞の修復効果もあります。
(3)目を温める
目を温めると血流が良くなって、角膜の炎症改善効果があります。
また、目を温めることで、まつげの生え際にある涙の油層を分泌するマイボーム腺のつまりを改善する効果もあります。
目の疲れをとるだけなら、蒸しタオルやホットアイマスクを3分程度温めるだけで効果がありますが、マイボーム腺の皮脂のつまりを解消するなら、40度以上の少し熱いタオルを10分程度目の上に乗せておく必要があります。
マイボーム腺の皮脂を溶かすには40度以上の温度で10陣程度温める必要があるのです。
しかし、40度の蒸しタオルは、けっこう熱いものです。
しかも空気に触れるとあっという間に冷えていきます。
だから、40~42度のお風呂の中で湯船に浸かりながら温かいタオルを目に乗せていると、目の周辺の血流を温めることになって、身体の中からと外から両方で温まりますので、血流も良くなって目も温まりますので、一層効果的です。
また、ホットアイマスクも適温を10分程度保てますので非常に効果的です。
(4)お部屋の乾燥を防ぐ
エアコンをつけっぱなしにする季節になると、お部屋が乾燥しやすくなって、ドライアイになりやすくなります。
そのため、加湿器や洗濯物の部屋干し等で、お部屋の湿度を60%程度に保ちましょう。
また、エアコンや扇風機の風が目に当たらないように気をつけましょう。
まとめ
2016年のドライアイ診断基準の改定によって、ドライアイの症状はドライアイ予備軍から角膜異常までと幅広くなりました。
ですから、目の乾燥の不快感だけで無く、目がゴロゴロした異物感や痛み、目の充血、角膜の異常による視力の低下も起ります。
「目が悪い人は目が乾燥しやすい」というのを聞いたことがある人も多いと思います。
これは、視力が低いと凝視して瞬きが少なくなるからです。
ということは、逆に積極的に瞬きをすると、健康な人なら瞬きをたくさんすれば涙が目を潤してくれるはずなのです。
しかし、その機能が損なわれるのがドライアイです。
ですから、日常生活で積極的に目に優しい生活を心がけ、それでもドライアイの症状が辛いときは早めに医師に相談しましょう。