40歳以上の約8割もの人がかかっているといわれている歯周病。
「歯周病にかかると口臭やお口のトラブルに悩まされるから大変だ!」という認識を多くの人が持っていますが、お口の中がどのような状態になるのか、具体的にわかっていない人の方も多いのではないでしょうか?
そこで、この記事では歯周病について詳しく解説します。
1.歯周病とは?
虫歯は、歯そのものが虫歯菌によって蝕まれていく病気ですが、歯周病は、その名の通り、歯の周辺組織が壊れていく病気です。
(1)歯と歯茎の構造
歯茎の中には、歯を支える骨である歯槽骨(しそうこつ)という歯の土台になる骨があってそれを歯茎が包んでいます。
歯と歯槽骨の間には、クッション的な役割を果たす歯根膜というのがあって、その上に歯が乗っていて、歯根膜と歯茎が繋がっています。
歯周病とは、この歯茎の組織が歯の表面から徐々に歯茎や歯根膜を侵食していき、歯周病が進むと歯槽骨まで侵食が進みますので、最終的には、歯がぐらぐらになって抜けてしまうのです。
(2)歯周病の原因菌が1億個もある?
口の中には、300~500種類もの細菌が住んでいます。
歯がきれいで磨き残しがない場合は、これらの菌は悪さをしません。
しかし、磨き残しがあったり、甘い物の食べかすが歯に残っていたら、これらの菌が、磨き残しや食べカスを餌にして、その排泄物(毒素)を出して、歯にネバネバした歯垢(細菌の住処)を作ってしまいます。
歯磨きの後に、舌で歯を触って、ヌルヌル・ザラザラしたら、それが歯垢です。
この歯垢は磨き残しですから、その内部は、栄養はあるし、水分も適度にあって、温度も37℃程度という、細菌にとって非常に快適な環境なのです。
そのため歯垢の内部では、細菌はどんどん繁殖して、1億個/1mgもの細菌が住み着いているといわれています。
この歯垢の中には、虫歯菌だけでなく歯周病の原因に特化した細菌がたくさんいることが証明されています。
歯垢は歯の表面についているのが一般的ですが、歯の磨き残しによって、歯茎と歯の間の隙間(歯周ポケット)に入り込むと、その細菌が歯茎の組織をどんどん壊していく毒素を出し続け、歯垢を大きくしていきます。
こうして、徐々に歯周ポケットを深くしていくのです。
(3)歯周病の進行の仕方
歯周ポケットが5mm~7mm程度なら、歯周病の初期状態といえます。
この段階では、まだブラッシングで歯を隅々まできれいにすることで、歯周ポケットを浅くすることができます。
しかし、歯垢を放置しておくと、細菌は歯茎をどんどん浸食していきます。
そして、歯垢を長期間放置しておくと、歯石となってもはや歯ブラシでは取れない強固な細菌の住処となっていくのです。歯石となっても、その中に住み着いた細菌達の住処としてはさらに強固な物となって、歯茎への浸食が進んでいってしまいます。
・歯肉炎
歯周ポケットが7mm以上深くなって、歯周ポケットが深くなるほど、歯周病が進行していると思いましょう。
歯肉炎は、歯茎に炎症が起きている状況をいいます。
まだ、歯槽骨には侵食は進んでいません。
ピンク色だった歯茎が真っ赤になり、歯茎が腫れて、ちょっとしたブラッシングでも出血するようになると、既に重傷です。
ブラッシングで出血しやすくなるので、念入りなブラッシングができにくく、腫れた歯茎と歯の間に一層歯垢がたまりやすくなり、歯肉炎がさらに悪化し、歯周炎に進行しやすい状況になります。
・歯周炎
老化現象として加齢とともに徐々に歯茎は下がって、歯と歯の間に食べ物が多少挟まりやすくなる物です。
しかし、老化現象の場合は、歯茎はピンク色できれいな色をしています。
一方、歯周病による歯茎の下がりは、赤紫色になり、見栄えが良くありません。
歯茎が下がって歯が長く見える様になりますが、歯根が出てきますので、老化現象だけで健康的な歯とは全く違います。
歯茎の腫れも酷くなり、軽いブラッシングでも出血や膿が出るようになります。
歯が長くなっているのに、さらに歯周ポケットも深くなっていきますので、歯槽骨まで被害が及び(歯槽骨が溶ける)、歯がぐらぐらするようになります。
2.歯周病のセルフチェックと進行しやすい要因チェック
(1)日本臨床歯周病学会推奨のセルフチェック
■Q:下記の項目にいくつ当てはまりますか?
1.朝起きたとき、口の中がネバネバする。
2.ブラッシング時に出血する。
3.口臭が気になる。
4.歯肉がむずがゆい、痛い。
5.歯肉が赤く腫れている。(健康的な歯肉はピンク色で引き締まっている)
6.かたい物が噛みにくい。
7.歯が長くなったような気がする。
8.前歯が出っ歯になったり、歯と歯の間に隙間がでてきた。食物が挟まる。
[出展:日本臨床歯周病学会より]
■A:当てはまった数
3つ:歯周病予備軍です。ご自分および歯医者さんで予防するように努めましょう。
6つ:歯周病が進行している可能性ありです。
8つ:歯周病ももはや重傷です。
(2)日本臨床歯周病学会による歯周病を進行させてしまう要因
1.歯ぎしり、くいしばり、かみしめ
2.不適合な冠や義歯
3.不規則な食習慣
4.喫煙
5.ストレス
6.全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)
7.薬の長期服用
[出展:日本臨床歯周病学会より]
上記のどの要因も、歯周病になりやすく、また歯周病の進行を早めてしまいます。
歯周病のセルフチェックで歯周病予備軍の人でも、上記の項目に1つでも当てはまる人は、歯周病を進行させてしまい安いので、定期的な予防歯科を心がけましょう。
まとめ
いかがでしたか?
最近では、歯周病の低年齢化が進んでいます。
小学生の歯周病も増え、もはや歯周病は40代以降の病気とはいえなくなりました。
歯がきれいな人は、第一印象が輝きます。
また、歯茎の形は美しい笑顔の源ともいえます。
しかし、歯茎や歯槽骨が一旦破壊されてしまうと、もはや元には戻らないのです。
海外では、赤ちゃんの頃から定期的に歯科医院に通ってクリーニングする習慣がある国の方が多く、日本のように虫歯があるのが当たり前の意識の国は、先進国では珍しいともいわれています。
しかし、最近では日本でも多くの歯科医が、定期的なクリーニングによる予防歯科に力を入れ、厚生労働省も歯のクリーニングを推奨しています。
歯のクリーニングを定期的に行うだけで、歯周病予防だけでなく、虫歯も早期発見できますので、年齢を重ねても、美しい健康的な歯茎と歯を維持できるのです。
「一生素敵な笑顔」で「一生自分の歯で食事をする」という幸せな生活を送れるように、今から心がけましょう。