メタボリック症候群

会社の一般定期健診でも36歳以上の成人病検診(メタボリック症候群の検査)が義務づけられています。
「メタボリック症候群」は、通称「メタボ」として、広く知られています。しかし、よく知られているようで、実は「詳しくは知らない」なんて人が多いのではないでしょうか?
ここでは、「メタボリック症候群」の定義と予防について詳しく解説します。

1.メタボリック症候群とは

メタボリック症候群とは、代謝異常症候群という意味で、代謝異常によって生じる病気の総称であり、病名ではありません。心臓や肺以外の内臓は、肋骨の下の腹腔内(おへそ周りのお腹部分)にあり、骨盤で支えられています。
ですから、内臓脂肪がたくさんつくと、お腹がポッコリしてきます。「『体重が変わらないのに、最近お腹がポッコリ出てきたな』と感じたら、メタボかもしれません」こんな感じのトクホの飲料水のCMを聞いたことがある人も多いと思います。
メタボリック症候群とは、内臓に脂肪がたくさんついた結果の脂肪の分泌物の変異による症状なのです。だから「内臓脂肪症候群」ともいわれています。

2.「メタボリック症候群」の定義とは?

メタボリック症候群の定義は、2005年4月に、日本医師会の日本循環器学会、日本糖尿病学会等8つの学会で審議されて作成発表された定義です。
40歳を超えると、メタボリック症候群やその予備軍に該当する人は非常に多くなり、男性は50%、女性は20%の確率で該当しているともいわれています。

<検査の仕方>

血圧・血液検査と、おへその上を通ってお腹周りを測定する方法で、メタボリック症候群(通称「メタボ」)の検査をします。まず、お腹周りの測定で、男性は85cm以上、女性は90cm以上で、メタボのイエローカードです。
さらに、血液検査の結果に、下記の異常値が出た場合

・中性脂肪異常 :150mg/dl以上
・HDLコレステロール異常 :40mg/dl以上
・血圧異常 :上130mmHg以上、下85mmHg以上

このうち2つ以上に該当すると、「メタボの疑いあり」となり、精密検査が必要となります。
精密検査の結果、脂質代謝異常(高脂血症)、高血糖(糖尿病の疑い)、高血圧のうち、2つ以上の病気に該当したら、メタボリック症候群の診断確定です。

3.メタボリック症候群の原因の生理活性物質(アディポサイトカイン)ってなに?

(1)生理活性物質(アディポサイトカイン)とは?

体内の脂肪組織は、身体に何らかの特有な作用を引き起こすさまざまな生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌しています。生理活性物質、別名アディポサイトカインとは、身体の細部の働きを微調整する身体に欠かせない物質の総称です。
例えば、ミネラル、ビタミン、酵素、核酸、ホルモン、神経伝達物質、サイトカイン(細胞から分泌される微量なタンパク質の総称)・・・etc.
これら緒物質は、以下のような健康な身体に適度な脂肪は欠かせないエネルギー物質です。

・内臓機能を正常に働かせる
・エネルギーの源となる
・細胞分裂を助ける
・免疫力の源
・抗酸化作用でアンチエイジングに作用する
・酵素・ホルモン等の働きの手助け
・核酸(遺伝子を作っている)の働きに作用する

(2)生理活性物質(アディポサイトカイン)の善玉と悪玉

その健康の源となる生理活性物質を善玉(善玉アディポサイトカイン)だとします。
しかし、脂肪が内臓にたくさん蓄積されてしまうと、脂肪から分泌される生理活性物質が、異常作用を引き起こします。これが身体に過剰な内臓脂肪が蓄積してしまった副作用です。この過剰な内臓脂肪から分泌された変異した生理活性物質は、身体に悪影響を及ぼすため、「悪玉アディポサイトカイン」(以下「悪玉」という)といわれています。
この悪玉が引き起こす身体の悪影響は、早く対処しないと最悪の場合、命にも拘る様々な症状を引き起こすのです。

・肥満症→あらゆる生活習慣病
・脂質代謝異常(高脂血症)・
・高コレステロール血症
・高血圧症→大動脈解離・脳梗塞・くも膜下出血等
・高血糖→糖尿病等
・脂肪肝→肝臓癌・肝臓病等
・高尿酸血症→痛風・尿路結石→虚血性心疾患・狭心症・心筋梗塞等

悪玉が引き起こすこれらの病気は、複数の症状が合併して、さらなる重い症状を引き起こします。
脳疾患や心疾患、そして最悪の場合、癌発症の原因になる可能性も高くなります。

まとめ

メタボリック症候群、通称メタボは、体型の変化が最初のサインです。
本来内臓脂肪は、血流や代謝をよくすれば、すぐに分解されますので、生活習慣の改善や食事療法、適度な運動によって、その予防は簡単です。簡単ですが、仕事や家事や子育て等、忙しい生活を送っている人には、規則正しい食生活や運動をするには、難しい環境にいる人も多いでしょう。
しかし、メタボリック症候群は健康寿命を確実に縮める原因となります。幸せな人生を送るためにも、忙しい生活の中、自分の体型をしっかりと管理して、可能な限り積極的に十分な睡眠と規則正しい食生活、すなわち身体に優しい生活を心がけましょう。