乗り物酔い

楽しい旅行のワクワク感よりも乗り物酔いの不安の方が大きくなってしまった経験はありませか?
でも、子供の時に乗り物酔いに悩まされていても、大人になって治ってしまうこともありますが、乗り物酔いも医学的に「動揺病」「加速度病」という病名のついたれっきとした病気なのです。
そこで、この記事では、乗り物酔いの原因や対処法を紹介します。

1.乗り物酔いの原因とは?

(1)乗り物酔いの原因

人は身体のバランスを耳の内耳の前庭機能で保っています。
前庭機能には、耳石器と三半規管があって、耳石器が水平と垂直の揺れを感知し、三半規管が身体の前角度のバランス感覚を感知する機能です。
しかし、乗り物に乗ったときの、目から入った映像と身体の揺れが一致しないときに、視覚からの情報と前庭機能による体感情報が、脳内でミスマッチを起こして、脳が混乱し、自律神経を乱します。
その結果、自律神経の乱れによる特有の症状である、冷や汗、顔面蒼白、頭痛に吐き気、嘔吐、めまい、その他さまざまな体調不良が起ってしまいます。
また、乗り物に乗ったときに感じる、乗り物酔いの不安やガソリンの臭い、他にも体調不良や睡眠不足も乗り物酔いを酷くします。

(2)前庭機能と五感の情報のミスマッチが脳に起こす症状とは?

ところで、先に述べた「視覚からの情報と前庭機能による体感情報が、脳内でミスマッチを起こし」とはどういうことなのでしょうか?
まず、脳がどのようにして外界の情報を完治しているのかを解説します。
脳は、五感で感じた情報と内耳の前庭機能で体感したバランスを、電子信号として脳で総合的に解析し、外界の様子を判断します。
この脳の解析の仕方を頭の片隅に置いて次の例の状況を想像してみてください。
例えば、電車の進行方向と逆方向の席に座っているとします。
あなたの目から入ってくる情報は、後ろ方向に進んでいます。
ところが、脳の前後の判断は視界によって行なわれますので、乗り物の進行方向とは逆になります。
その結果、脳の情報は2つに別れて混乱するのです。

 ①車内の空間の判断は、視覚と前庭機能によって、乗り物の揺れや抵抗は後方へと引っ張られている感じで、後進しているように感じます。
 ②窓の景色は高速で後進していますが、あなたは前を向いてじっと座っています。

この2つの情報は全く逆なので、脳が混乱してしまって、自律神経が乱れてしまうというわけです。
だから、乗り物酔いをする人は、進行方向と同じ向きに座ることをお勧めします。
あるいは、じっと座っているのに、乗り物の揺れによって前や後ろに身体は揺れます。
この場合は、じっとしているという意識と身体の揺れに脳が混乱します。
このように、外界からの情報のミスマッチで、脳がパニックを起こして自律神経を見出すので、その状態がさまざまな「乗り物酔い」という症状になって現れるのです。
また、普段から乗り物酔いに悩まされている人は、身体をそのように思い込ませる準備をしているようなものだということを意識してください。
例えば、肝試しで「恐い恐い」と思っていると、ちょっとした物音でも腰を抜かすほど驚いてしまうといった話を聞いたり体験したことはありませんか?
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」というわけです。
乗り物酔いも脳の単なる混乱です。物理的にあり得る現実なのですから、何も混乱することはないのです。
「『乗り物酔い』の正体見たり脳のパニック」なのですから、リラックスですよ。
「慣れれば何でもないこと」なのです。
大人になって乗り物に酔わなくなる人は、慣れたというわけです。

2.乗り物酔いの症状

あくびや異常な唾がたくさん出始め、唾をどんどん飲み込み、胃の膨張感や違和感といった症状が出始め、少しずつ気分が悪くなります。
気持ち的に少しずつ焦りが出始め、不安になり始めます。
この状態が、自律神経の乱れ始めた証拠です。
そうとは気付かず、身体が緊張して血流が悪くなると、一層自律神経を見出し、症状を悪化させてしまいます。
その結果、自律神経は胃腸に症状が出やすいので吐き気や嘔吐といった症状へと進みます。
吐いてしまった場合、脱水症状にならないように、水を飲むのを忘れないようにしましょう。

3.乗り物酔いの予防方法

(1)揺れの少ない席に座りましょう

乗り物酔いをする人は、なるべく揺れない席に座りましょう。
バスなら運転席の近く、船なら中央の席が揺れが少ないといわれています。
電車では進行方向を向いて座りましょう。

(2)なるべくリラックスして乗り物の中では楽しく過ごしましょう

窓の外を見てその景色を楽しみ、自分が同じ速度で動いているかのような想像をしてみましょう。
この意識的な想像が、脳の情報のミスマッチを軽減してくれます。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」状態で、小さな揺れでも乗り物酔いの引き金になってしまいます。
「『乗り物酔い』の正体見たり脳のパニック」を思い出しましょう。
乗り物の中では、音楽を聴いたり、楽しくおしゃべりをしたりして、乗り物酔いをするのを忘れてしまうように心がけましょう。
昔は「おへそに10円玉」「おでこに10円玉」という乗り物酔い止めのお呪いがありました。
お母さんが、小さな子供にそう言い聞かせて、そう信じさせる事で、10円玉を貼ってあげると、子供は気分的に安心して乗り物に酔わない、というわけです。
脳の情報のミスマッチが起きた時に、「お呪いがあるから大丈夫」という強い思い込みが効いて、自律神経が乱れないのです。
リラックスのために読書やスマホのゲームをする人もいますが、乗り物の揺れで、本の字やゲームの画面が揺れたりすると、身体の揺れの感覚が増大して症状を悪化させてしまう可能性大が高くなります。

(3)前の日に十分な睡眠をとっておきましょう

睡眠不足は自律神経を乱れやすくしてしまいます。
自律神経が乱れるような状態に脳が追い込まれたときに、睡眠不足で自律神経のバランスが乱れかかっていたら、余計に症状を重くしてしまいます。

(4)乗り物に乗る前や取る時には消化の良いものを採りましょう

乗り物酔いの症状として目立つのは、吐き気です。用心のために消化の良い物を食べておきましょう。
ただでさえ胃腸の調子がおかしいときに、乗り物酔いになってしまうと吐き気を助長してしまいます。自律神経は、脳を介さずに内臓に直結する神経です。ですから、ストレスだけでも自律神経は乱れるのです。
できるだけリラックスして、胃腸を快適にしておきましょう。

(5)乗り物酔いの薬を乗り物に乗る30分前に飲んでおきましょう

乗り物に乗る30分くらい前に、酔い止めの薬を飲んでおきましょう。薬の効果もさることながら、「酔い止めの薬を飲んでいる」という安心感が、脳のパニックを押さえ、自律神経の乱れが抑えられる効果があります。
先述した10円玉のお呪いと同じ効果に、医学的な薬の効果を高めます。
「病は気から」「信じる者は救われる」といいますが、乗り物酔いを引き起こす内臓は、自律神経が直結していますので、安心感は自律神経を安定させる特効薬なのです。
先に述べた10円玉の乗り物酔いのお呪いもそうですが、ビタミン剤や乗り物酔いに効くお茶と称したミネラルウォーターで「乗り物に酔わなかった」という例はたくさんあります。とくに小さな子供には効果的です。

まとめ

いかがでしたか?乗り物酔いのメカニズムがわかっただけでも安心しませんか?
乗り物酔いは、脳の混乱に過ぎません。唾が大量にでて、気分が悪くなり始めたら、深呼吸をして落ち着きましょう。息をゆっくりと長めに吐くと、脳が思考を停止して頭が真っ白になるので、落ち着きやすいです。落ち着いたところで、「大丈夫」と何度も唱え、頭にすり込みましょう。
また、身体を揺らすまいと全身に力を入れるのではなく、車の揺れにある程度身体を委ねるのも効果的です。身体の動きと状況が一致するので、脳が混乱しにくくなります。とにかく心身ともにリラックスするように心がけてくださいね。
なお、通常乗り物酔いは大人になるに従って治るのがほとんどです。大人になっても、酷い乗り物酔いに悩まされる人は、内耳の前庭機関が弱かったり、異常があったりするかもしれませんので、我慢しないで医師に相談するのも効果的です。
とくに、大人になって突然乗り物酔いになり始めた人は、ストレスや何らかの病気が原因で内耳の前庭機関の異常が生じた疑がありますので、「たかが乗り物酔い」とか「疲れかな?」といったふうに軽く見ないで、早めに医師に相談することをお勧めします。