認知症患者のBPSDと付き合い、症状を和らげる
認知症の症状として有名なものとしては物忘れ、徘徊、話のつじつまが合わないなどがあげられますが、認知症自体の症状であるものと、認知症の影響で発生している異常行動とに分けられます。それぞれに対応方法、治療方法が異なるので、よく観察し適切な対応を行うことで、認知症の患者を落ち着かせることが可能です。
認知症の原因となる疾病
認知症の原因となる疾病には三大疾病と言われるものがあります。最も有名なのはアルツハイマー型認知症です。原因はまだはっきりとは定まっておらず、脳に特殊なタンパク質がたまり細胞が死滅していった結果発生するとも、ウイルスに感染し老人斑によるものなど、様々な原因が提唱されています。特徴としてはまさに認知症のイメージ通り、記憶力の低下、生活能力の悪化、見当識障害、言語障害などがあげられます。認知症患者の7割近くを占め、介護に困難を伴うのが特徴です。
もう一つ多いのがレビー小体型認知症です。アルツハイマー型よりも記憶や行動に関わる症状は少ない傾向にありますが、最大の特徴は幻視です。実際にはいない人が見えたり子供や動物が部屋に入ってきたりという風景が見え、それに伴って異常行動が発生します。
最後は脳血管性認知症です。これは脳梗塞や脳溢血などによって脳に十分な血液が渡ら亡くなったことが原因で発生します。3つの認知症の中では治療できる可能性は一番高いタイプです。
以上のような疾病によって認知症の症状が引き起こされます。
中核症状とBPSD
認知症の症状には中核症状とBPSDがあります。中核症状とは認知症を形作っている症状そのものです。
・記憶障害:物忘れがひどく新しいことを覚えられない
・見当識障害:人や物を見分けられない、時間・場所がわからない
・判断力障害:物事を合理的に考えられなくなり、理屈がわからなくなる
・実行機能障害:あることをするためにどうしたらよいかわからなくなり、計画も立てられない
・失語、失認、失行:名称がわからなくなる、今までできていたことができなくなる、複数の動作を組み合わせられなくなる
上記のような症状があります。これらは認知症を患っている患者のすべてに何らかの形で現れるものです。そしてこの中核症状が原因でBPSDが発生します。問題行動として発生している内容がBPSDなのです。
BPSDには妄想、異常な食行動、徘徊、異常な排泄行動、暴力・暴言、多弁・多動、昼夜逆転、幻覚などが挙げられます。例えば妄想は、嫁が自分に食事を出さないといったもの。異常な食行動は際限なく冷蔵庫のものを食べ続けてしまう。多動は止まることなくずっと動き回る等の行動となって現れます。
BPSDへどのように対応するべきか
多くの介護者が認知症患者のBPSDには悩んでいます。教えたことを何度言っても理解できない、してはいけないことをするということで認知症患者に辛く当たってしまう方も多いでしょう。
認知症患者は中核症状によって、これまでできていたことがうまくできなくなったり、物事の因果関係が理解できなくなり、大きな混乱とストレスを感じています。これに加え、介護者からの叱責や否定的な発言、暴力などがあると不快刺激を受けて脳が萎縮します。脳が萎縮すると認知症の症状が進行します。
ですので、認知症患者には不快な刺激を与えないように、日々安心して過ごしてもらうことで症状の進行を抑えやすくなります。安心して過ごしてもらうためには、環境を安定させること、褒めることを増やし認知症患者の個性を認めてあげることが大切です。
認知症は治療できるのか
認知症の治療薬というのはまだ出ていません。そのため、認知症患者を治療するためには生活の中でのリハビリテーションを行うのが主流です。生活の中でのリハビリというのは、できることをなるべく続けていくことです。洗濯物たたみ、掃除、洗い物などの家事に加え、歯磨き、服を自分で着るなどの日常行動も加えます。動作に時間がかかり、正確性がないからといって介護者がすべて行ってしまうと、認知症患者のトレーニングの機会が失われ、症状が進行します。
また、薬物治療の場合はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗剤を投与することが一般的です。しかし、薬を投与することによって攻撃的になったり活動意欲が極端に減退する等の副作用があり、人間性が大幅に失われる可能性があります。薬物治療の際の副作用は個人差が相当大きいので、状況を見て続けるか辞めるかの判断を慎重に行わなければなりません、
まとめ:認知症患者の症状とは長く付き合う
認知症の症状は現在のところ寛解することは少なく、症状は進行していきます。しかし、生活の中で安心を許容を与えることで、進行を緩やかにすることは可能です。
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