下痢止めを使っちゃいけない下痢って?!市販の下痢止めの正しい使い方

「な、なんでこんなときに…。」ぐるぐる鳴るお腹を抱えて痛みに耐えた経験が誰しもあることでしょう。通勤中の電車の中、試験中、会議中と下痢は空気をまったく読まずにやってきます。そんなときに持っていると便利なのが下痢止め。市販で手軽に買えるため常備している方も多いです。

でもちょっと待ってください。あなたの下痢、本当に止めてしまって大丈夫ですか?中には止めない方が良い下痢もあります。もしかしたら下痢止めのせいで症状が長引いている可能性も。ここでは下痢の原因や下痢止めの正しい使い方をご紹介しています。正しい使い方をマスターして下痢を正しく対処しましょう。

1.下痢を引き起こす原因

下痢はいろいろな原因によって引き起こされます。その原因によって下痢止めを飲んでいいのか、飲んじゃダメなのかが決まります。もしも下痢をしてしまったら、まずは原因が何なのかをハッキリさせてください。

1-1.原因その1. 食あたり

悪くなっている食べ物、菌やウイルスに汚染されている食べ物を食べることによって起こるのが食あたりです。ちょっと賞味期限切れているけどいっかとか、いつ買ったか分からない明太子だけど食べちゃえとかやっていると見事にあたります。

明らかにカビが生えていれば食べる前に気がつけますがひっそりと菌やウイルスが繁殖している場合は変な匂いがしない限りは気づきません。生肉やお刺身であたることもあります。

1-2.原因その2. 消化不良

食べ過ぎ、飲み過ぎは胃腸に大きな負担をかけます。胃にどんどん食べ物や飲み物が入ってきて消化が間に合わなくなってしまうのです。辛いものの食べ過ぎでも下痢になることがあります。激辛料理を食べたら気持ち悪くなったり下痢をしたりといった経験がありませんか?とうがらしに含まれているカプサイシンは胃腸に刺激を与えます。これだけでも下痢になることがあるのですが、カプサイシンが人間の体では消化できないというのも下痢の原因の1つです。消化できないものが胃にたまると消化不良の状態になってしまうのです

1-3.原因その3. ストレス

ストレスも下痢の原因なんですね。仕事に行きたくない、学校に行きたくない、そんなストレスがお腹に負担をかけます。電車に乗るだけでお腹が痛くなるという方もいるほどです。ストレスが原因の下痢は過敏性腸症候群と呼ばれることもあります。胃やお腹に何か疾患があるわけではないのに胃腸症状が出てしまうものです。過敏性腸症候群の場合、人によっては下痢だけでなく便秘になることも。

また、ストレスをため続けていると体の免疫力が低下していきます。そうすると普段は何ともない食事でも下痢を起こすことがあります。

1-4.原因その4. 薬の副作用

薬の副作用で下痢を起こすことも珍しくありません。下痢を起こすことで有名なのは抗生物質ですね。体の中にいる悪い菌だけでなく、良い菌も一緒にやっつけてしまうため腸内環境が悪くなってしまうのです。

インフルエンザの治療薬として有名なタミフルも副作用として下痢や腹痛は起こすことが知られています。

抗生物質を飲む度に盛大にお腹を壊すので私は抗生物質を飲むのがあまり好きではありません。トレイから出られなくなります。。

1-5.寝冷え、お腹の冷え

「お腹を出して寝るとお腹を壊すよ!」と注意され暑いのに上から毛布をかけられたあの夏。言うことを聞かずにお腹丸出しで寝た翌朝にはしっかりと下痢になっていた覚えがあります。お腹が冷えると腸の蠕動運動が活発になるために下痢を起こしてしまうのです。

お腹の冷えやすさというのが人によって違うようで、布一枚すらまとわずにお腹をさらけ出して寝てもまったく下痢にならない人もいれば、お腹の上に毛布をかけても下痢をするという方もいます。

2.下痢止めを使ってOKな下痢とNGな下痢

・食あたり
・消化不良
・ストレス
・薬の副作用
・寝冷え・お腹の冷え

さて、これらの下痢の原因の中で下痢止めを使うのが好ましくないのはどれでしょうか。答えは1番上の「食あたり」です。よっぽど下痢が続いて脱水症状を起こしているような状態でない限りは使わない方が良いんです。なぜかと言うと、体の中にいる悪い菌やウイルスを下痢によって外に出そうとしているんですね。それを無理やり止めてしまうわけですから、菌やウイルスが余計に体内にたまったままになってしまうのです。何かお薬を服用する場合は乳酸菌やビフィズス菌などの整腸剤、もしくはセイロガンを使うと良いですよ。セイロガンが感染性の下痢になぜ使って良いのか、詳しい理由は後ほどお話します。

他の消化不良やストレス、薬の副作用などは菌やウイルスの感染とは関係ないので使っても大丈夫です。ただし下痢は起こるべくして起こっているものというのをお忘れなく。体は基本的に下痢をすることによって胃腸の調子を正常に戻そうとしています。その働きを下痢止めは止めてしまうんですね。食あたり以外の下痢であれば下痢止めを使っても良いのですが安易には使っても良いものではないんだ、ということだけは覚えておいてください。

3.市販で買える下痢止めの種類

ドラッグストアに足を運ぶと意外と多くの下痢止めが並んでいることに驚きます。ストッパや正露丸はCMの効果もあり知っている方が多いですが、もちろん他にもたくさん種類があります。それぞれの下痢止めの特徴をここではご説明していきます。

3-1.ストッパ 下痢止めEX 24錠

【第2類医薬品】ストッパ 下痢止めEX(24錠)

●配合成分
・ロートエキス3倍散
・タンニン酸ベルベリン

●ストッパ下痢止めEXの特徴
ストッパ下痢止めは水なしでサッと飲めるのでいざというときの緊急事態にぴったりの医薬品です。ロートエキスは腸が異常に動くのを抑えます。下痢は腸が通常よりも活発に動いてしまうことで起こるので、腸の動きを止めてあげるのが効果的なのです。ロートエキスはあまりにも胃もたれがひどいときには向いていないので服用するときは注意してくださいね。

タンニン酸ベルベリンは抗菌作用や抗炎症作用を持つ成分です。悪い菌が体の中で増えるのを抑えてくれます。また、乱れた腸内最近のバランスを整えてくれる働きも持っています。眠くなる成分が入っていないので試験中のお腹の対策にも使いやすいですよ。

3-2.トメダインコーワフィルム6枚

【第(2)類医薬品】☆トメダインコーワフィルム6枚

●配合成分
・ロペラミド塩酸塩

●トメダインコーワフィルムの特徴
トメダインコーワフィルムはとっても珍しい形状をしている製品で、何とフィルムタイプのものなんですね。暑さはなんとたったの0.08mm。ポケットや筆箱に入れてもかさばらず、使いたいときにサッと取り出して使えます。

しかも配合成分のロペラミド塩酸塩は下痢止め成分の中でも効果が非常に高いものです。腸の動きを止める効果が強いため菌やウイルスなどによる感染性の下痢には原則、服用禁忌です。食あたりの方は服用しないようにしてくださいね。

副作用として便秘が現れやすいので症状があるときだけ服用しましょう。痔疾のように便秘になることで症状が悪化する恐れのある疾患をお持ちの方は特に注意して使ってください。

3-3.セイロガン糖衣A

【第2類医薬品】セイロガン糖衣A PTP48錠

●配合成分
・日局木(もく)クレオソート
・日局ゲンノショウコ末
・オウバク乾燥エキス

●セイロガン糖衣Aの特徴
こちらのセイロガンは糖衣錠といってお薬の周りが糖でコーティングされているものです。そのため、あの独特の匂いがほとんどしません。木クレオソートは古くからお腹に使われてきた成分です。腸内の水分量を調節する働きがあります。また腸の運動を正常に戻そうとする働きもあります。セイロガンを虫歯に詰めると痛みがなくなると言われているのもこの木クレオソートの働きによります。局所麻酔効果があるので、虫歯に詰めることで痛みを感じにくくするんですね。

ゲンノショウコは腸の運動を調整して正常に戻そうとする働きを持っています。ゲンノショウコを飲めばすぐに下痢が止まると言われている生薬で昔から煎じて飲まれてきました。オウバクは抗菌作用や抗炎症作用を持つ生薬です。

感染性の下痢には下痢止めは使えないとお話してきましたが、このセイロガンだけは話が別です。例外的に使えます。なぜなら腸の動きを止めないから。そう、セイロガンには腸の動きを止める成分が入っていないんです。あくまで水分量と腸の動きの調節をし、殺菌するだけ。そう考えると常備薬の下痢止めとしては1番適しているのかもしれません。

4.下痢をしているときの注意点

下痢をしているとき、どんなことに注意したら良いのでしょうか。たかが下痢と甘く見ていると痛い目を見ます。早くつらい症状から解放されるためにも、下痢との正しい付き合い方を覚えておきましょう。

●発熱、嘔吐を伴う場合は病院へ
ちょっとお腹を下しているという程度を超えて高熱が出たり、嘔吐をしたりしている場合は市販薬を使わずになるべく病院で診てもらってください。下痢だけでなく高熱や嘔吐を伴う場合はウイルスの感染の場合もありますが、腸に何らかの疾患がある可能性もあります。

●症状が長く続く場合は病菌が潜んでいる可能性も
下痢止めを飲んでも数週間、症状が落ち着かない場合は病院で診てもらうようにしてください。単なるお腹の冷えや食べ過ぎではなく何らかの疾患が隠れている場合があります。

●菌やウイルスなどの感染性の下痢でも脱水を起こしている場合は下痢止めを
感染性の下痢には基本的に下痢止めは使ってはいけません。しかし激しい下痢によって体力を著しく消耗し、脱水症状を起こしている場合は例外です。脱水症状は命取りになることもありますのでストッパやセイロガンなどで下痢の症状を抑えてあげることが大切です。

1番良いのは自己判断で市販薬を飲まずに病院でしっかり診てもらうこと。使ってはいけないと言われているお薬を自分の判断で使うのは勇気がいることです。どこまで下痢が酷くなったら下痢止めを飲んだ方が良いのかを判断するのは難しいため、医師に判断を委ねましょう。

5.まとめ

下痢になった止めきゃ、と原因が何かというのをまったく気にせずに下痢止めを飲んでいる方は意外と多いのではと思います。実際にお店でも食あたりで…と言って下痢止めを買いに来られる方が多くいます。でも、これだけは覚えておいてくださいね。

・感染性の下痢には下痢止めは基本的に使用禁止
・ただし脱水症状を起こすくらい激しい下痢の場合は使用OK
(トメダインコーワフィルムのようにロペラミド塩酸塩が入っているものは避けてくださいね。)

余計に下痢の症状を長引かせてしまう原因になります。かくいう私もかなりお腹が弱いので必ず下痢止めを持ち歩いています。使い方によっては下痢止めはとっても便利なものです。正しい使い方をマスターして下痢の症状に怯えない毎日を過ごしたいですね。

そういえば下痢に効くツボもあるみたいですよ。押しやすいのは手の甲の親指と人指し指の間にある合谷(ごうこく)というツボ。緊急時の助け舟として覚えておくといつか役に立つかもしれません。

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香川県観音寺市の創業100年になる福田薬局の三代目薬剤師。 ドラッグストア業界に30年従事、チェーンドラッグと日々戦い続ける毎日をおくる。2013年よりEC事業にも本格参入。2店舗の実店舗と7店舗のネットショップを運営。 ランチェスター戦略が大好きなミドルエイジ!