防風通聖散ですが、ドラッグストアの店頭にはたくさんの種類の商品が並んでいます。正直なところ、どれを選べばよいのか?わからないですよね。どのように商品を比較するべきか?配合成分や価格、服用量の観点から、現役薬剤師が徹底比較したいと思います。
今回の比較を行うにあたって参考にしたのは、販売商品及び添付文書、Pmda(医薬品・医療機器総合機構)、各社メーカーのHP、お客様相談室、メーカーの担当営業の情報を元に作製しました。3日間を費やし整理しましたが、記載内容が誤ってる場合、メーカー様は是非ご連絡お願いします。では、今回も最後までお付き合い下さい。Here we go!
■防風通聖散の一般用医薬品の流通状況
小林製薬やロート製薬などの大手メーカーを筆頭にドラッグストアの店頭には防風通聖散がかなりの種類並んでいます。
小林製薬は、ナイシトールというブランドで配合量や容量に応じて、Z、G、85aと数種類をラインナップしています。どのお店にも小林製薬、ロート製薬、クラシエ薬品などの品揃に加えて各企業のプライベートブランドが品揃えされています。
現在は、ダントツでナイシトールシリーズが知名度も販売量も群を抜いています。なかでも、ナイシトールZシリーズは、「満量5000㎎」と表記されたシリーズ最高含有量の商品が、多くの方の支持を受けています。
ロート製薬も負けじと和漢箋シリーズに満量5000㎎の商品を投入。お互いに、しのぎを削っています。
■防風通聖散の満量処方とは?
ところで、満量処方とは、どういう意味でしょう?実は、この部分の調査に非常に時間がかかりました。パッケージに満量と記載があるものの、5000㎎や6000㎎と幅があるからなのです。通常、満量処方とは以下のように考えます。
各漢方処方は、医薬品です。日本では、医薬品は厳密に法律で規定されています。原料となる生薬の品質はもちろんのこと、漢方処方の場合各々の生薬の配合量も厳格に決められています。
通常は、この規定に則った処方のことを満量処方と呼びます。
医療用医薬品の場合、満量処方が多いのですが、一般用医薬品では、その2/3や半量の処方のものが多くあります。
例えば、有名なツムラの漢方薬の62番の防風通聖散は、医療用は、一日量が4.5gの有効成分ですが、一般用医薬品は、2.25gと半分なのです。
■防風通聖散の満量エキス量は6000㎎なの?
最近、売り場でひときわ目立っている6000㎎の有効成分の表示の商品。北日本製薬の防風通聖散料エキス錠 至聖という商品。この商品が、果たしてダントツの有効成分の含有量なのか?電話で問い合わせてみました。
「防風通聖散のパッケージに5,000㎎で満量と記載されているものが多い中、御社の商品は、6000㎎の表記があるがどう違うのか?」
北日本製薬の女性の窓口の方は、
「各社、色々ですので一概に比較はできないのですが、とにかく、当社の商品を一度服用いただくのがよいのではないでしょうか?」と、
話をはぐらかされてしまいました。
医薬品が、各社色々?であってもよいのか?少し疑問に残る解答でした。
■市販の防風通聖散10種類を比較表にしてまとめてみました。
↑ 画像をクリックすると拡大します。
一般的に流通している防風通聖散10種類で比較検討してみることにしました。右の3種類は顆粒剤、左の7種類は錠剤タイプです。医療用分野では顆粒剤が主流ですが、一般用医薬品では、飲みやすい錠剤タイプが圧倒的に支持されています。
エキス量の表示だけでは判断ができないので、添付文書に記載のある配合生薬18種類を合計してみました。
また、参考までにメーカー希望小売価格や一日服用量などを記載しています。
■防風通聖散の比較表から見えてくることは?
表の左の4種類
・ロート製薬 和漢箋 新防風通聖散錠 満量 360錠
・阪本漢方製薬 アンラビリゴールド 360錠
・北日本製薬 防風通聖散料エキス錠「至聖」396錠
・小林製薬 ナイシトールZ 420錠
この4種類が、一日の生薬総量が約27.2gで同等だということがわかります。
この記事では、パッケージの表記の5000㎎や6000㎎ということに惑わされず、前述した生薬総量27.2gを満量処方と考え、冷静に比較検討したいと思います。
■一回あたりの服用量を比較します。
満量処方というのは、一日あたりの生薬含有総量は同じですが、何錠服用すれば満量になるのか?ということは、商品ごとに違います。
つまり、1日12錠で満量になるものもあれば、18錠のものもあります。一回あたりの服用錠数は、各メーカーの商品でマチマチなのです。
この件は、消費者の立場からすると一回の服用量が少ないにこしたことはありません。
ロート製薬の防風通聖散及び、阪本漢方のアンラビリゴールドが1回4錠、一番多いのは北日本製薬の防風通聖散「至聖」の1回6錠、小林製薬のナイシトールZが1回5錠という結果になりました。ロート製薬の防風通聖散錠と阪本漢方のアンラビリゴールドに軍配が上がると判定します。
■満量処方の4品の価格を比較してみます。
メーカー希望小売価格では比較対象にならないので、今回は、福薬本舗総本店で販売している実勢価格から一日あたりの金額を算出します。
・ロート製薬 和漢箋 新防風通聖散錠 満量 360錠
和漢箋新ロート防風通聖散錠満量 360錠×1個
税込・送料込 6,380円
一日あたり単価:約213円
和漢箋新ロート防風通聖散錠満量 360錠×3個
税込み・送料込 14,800円
一日あたり単価:約165円
・阪本漢方製薬 アンラビリゴールド 360錠
阪本漢方 防風通聖散アンラビリゴールド 360錠 ×1個
税込・送料込 3,980円
一日あたり単価:約133円
阪本漢方 防風通聖散アンラビリゴールド 360錠 ×3個
税込・送料込 9,500円
一日あたり単価:約106円
北日本製薬 防風通聖散料エキス錠「至聖」396錠
北日本製薬 防風通聖散料エキス錠「至聖」396錠×1個
税込・送料込 3,480円
一日あたり単価:約158円
北日本製薬 防風通聖散料エキス錠「至聖」396錠×3個
税込・送料込 8,980円
一日あたり単価:約136円
小林製薬 ナイシトールZ 420錠
小林製薬 ナイシトールZ 420錠×1個
税込・送料込 6480円
一日あたり単価:約231円
小林製薬 ナイシトールZ 420錠×3個
税込・送料込 18,800円
一日あたり単価:約223円
一日あたりの単価は、随分差があることがわかりますね。
・ロート製薬 防風通聖散満量 213円/1日、お得用165円/1日
・阪本漢方製薬 アンラビリゴールド 133円/1日、お得用106円/1日
・北日本製薬 防風通聖散「至聖」 158円/1日、お得用136円/1日
・小林製薬 ナイシトールZ 231円/1日、お得用223円/1日
■まとめ
今回、一般用医薬品の10種類の防風通聖散を比較検討してみました。特定の商品をディスる為にこの記事を書いたわけではなく、消費者があくまでも冷静に比較検討する参考になればと思いテーマとして取り上げました。
ここで勘違いしてほしくないのが、何も「含有量が多い商品がすばらしい!」と評価しているわけはありません。
防風通聖散は、大黄・芒硝という下剤が含有されており、人によっては腹痛や下痢を起こす場合があります。
服用量は、その人に合うように、一回4錠を3錠に減らしたり、一日3回の服用を2回にしてみるなど、調整が必要です。
このことは、便秘薬などにも共通して言えることで、記載している服用量は必ず飲みなさい。ということではなく、ご自分に合わせて錠数を減らすなどしてコントロールしていくことが大事です。
今回の比較では、阪本漢方製薬のアンラビリゴールドがNo.1に輝きました。追ってメーカーには表彰状をお送りします。
含有量や、一日服用量、販売価格など全てにおいてNo.1でした。
この商品には、パウチタイプのトライアルパックも発売されてますので、まずは1週間分服用されるのもよいかもしれませんね。
漢方薬は、海外でエキス剤を加工するメーカーも最近は多いですが、阪本漢方製薬の製品は、現在も国内工場で製造されており、メーカーとしてはコスト高になるかもしれませんが、高い品質を維持することを優先しています。
漢方薬の場合、原料生薬を輸入するのには、かなりの運賃がかかります。安く製造するためには、現地(中国)でエキス加工を施し日本へ運搬する方が輸送料が大幅に削減できるわけです。
でも、阪本漢方製薬は国内の自社工場での生産に地味にこだわっています。ん~なかなかやりますな。
これからも消費者に指示される高品質な商品を安心価格で供給頂きたいと思います。
医薬品にだけ言えることではありませんが、売れてる商品や知名度がある商品が、決して「品質もすばらしい?」とは一概に言えません。
自分にあった商品を正しく選択し服用するためにも店頭でも薬剤師にわからないことは、是非、相談して下さい。
自己判断ではなく、アドバイスをもらいながら選択するのが一番上手なお買物だといえます。
かしこく購入、かしこく利用!これが、私達の願いなのです。
最新記事 by 福田 晃 (全て見る)
- カクナクト - 2020年6月28日
- 楽天は、アマゾンへ染まっていくのか? - 2019年8月6日
- 防風通聖散はどのような漢方薬?やっぱりおすすめはアンラビリゴールド! - 2019年5月13日