心臓の調子、気になったことがありますか?心臓は人間の臓器の中でも最も重要と言える臓器です。そのため難しい症状のものは病院でないと治療ができません。しかし、市販にも実は心臓のためのお薬があるのです。「強心薬」という分類のお薬で、種類はあまり多くありません。救心や六神丸といった商品が代表的です。
私たちの体を動かす大事な心臓に、市販の強心薬はどれほどの効果をもたらしてくれるのでしょうか。また、どのような症状に使えるものなのでしょうか。それぞれの強心薬がどうやって心臓に働きかけるのか詳しく見ていきます。
1.強心薬って何?どんな働きをするもの?
強心薬はその名前の通り「心臓を強くするお薬」です。心臓の働きを助けてあげるものですね。そもそも心臓ってどんな役割をしているのかご存知ですか?ドックン、ドックンと血液を全身の送り出しているというイメージはきっと多くの方がお持ちでしょう。心臓の働きをまずは確認して、強心薬が心臓にどのように働きかけるのか見てみましょう。
1-1.心臓の働き
先にやや答えを言ってしまいましたが、心臓は全身に血液を循環させる「ポンプ」の役割を果たしている臓器です。心臓は4つの部屋に分かれていて縮んだり伸びたりすることで全身に血液を送り出しています。
血液が全身をめぐり、肺で血液をきれいにして心臓に戻り再び全身に運ばれていきます。血液を全身に送ることで酸素や栄養素を運んだり、不要なものを回収したりしているのです。
心臓が関係する疾患について少し見ていきましょう。
●高血圧
一度に送り出す血液の量が増えたり、血管が狭くなったりして血液が血管を通りにくくなると心臓はいつもより強い力で収縮して血液を全身に送らなければなりません。心臓にとても負荷がかかってしまいます。強い圧力をかけて血液を送り出している状態を高血圧と呼び、病院で計った血圧が140/90mmHg以上になると高血圧と診断されます。
●心不全
心臓の働きが落ちている状態を心不全といいます。ポンプ機能が低下することで血液がうまく循環しなくなってしまうものです。高血圧や心筋症といった疾患が原因となることが多いです。疲れやすくなったり息切れがしたりします。
●不整脈
不整脈は心臓のドックン、ドックンというリズムが崩れてしまったものをいいます。リズムが速くなると頻脈、遅くなると徐脈というふうに区別しています。
●虚血性心疾患
何らかの原因によって血液が心臓に送りづらくなっているものを虚血性心疾患と呼んでいます。狭心症や心筋梗塞が虚血性心疾患の代表的な疾患です。
1-2.市販の強心薬はどんな働きを持っているの?
高血圧や心不全、不整脈や虚血性心疾患、強心薬はどんな症状に効くと思いますか?驚くことに実はここで紹介したすべての疾患は市販の強心薬では治療できません。心臓を強くするお薬なのに何も治療できないの?と驚くことでしょう。
心臓は人間の命とも言える大事な臓器です。これらの疾患は病状に合わせて細かくお薬を選んで治療していかなければならないものばかり。自分で買って服用できる市販薬では対処ができないのです。
じゃあ、いったい何に使えるの?って思いますよね。市販の強心薬が使える症状は
・息切れ
・気つけ
・どうき
といったような症状のみです。病院に行くほどではないけど調子が悪い、そんな症状に使えるのが市販の強心薬です。
2.市販で買える強心薬その1. 救心
「きゅう~しん、きゅーしん♪」とCMでもたびたび流れていることからご存知の方も多いでしょう。市販で買える心臓のお薬と聞くと真っ先に救心を思い浮かべる方が非常に多いのでは?
●配合成分
・蟾酥(センソ)
・牛黄(ゴオウ)
・鹿茸末(ロクジョウマツ)
・人参(ニンジン)
・羚羊角末(レイヨウカクマツ)
・真珠(シンジュ)
・沈香(ジンコウ)
・龍脳(リュウノウ)
・動物胆(ドウブツタン)
●救心の効能効果
・どうき
・息切れ
・気つけ
●それぞれの生薬の働き
なんとまあ、難しい漢字の生薬がたくさん入っていること!鹿や牛に龍と生き物をイメージさせるものが多いですね。
・蟾酥(センソ)
蟾とはヒキガエルのこと。そう、雨が降るとよく見かけるあのカエルです。センソはカエルの分泌物を集めたもののことで「がまの油」と呼ばれることもあります。心臓がぎゅっと縮む力を強くしてくれます。
・牛黄(ゴオウ)
ゴオウは牛の胆のうにできた結石のことです。結石を薬にするなんてすごい考えですね。結石を持った人間よりも健康な人間が多いのと同じで、結石を持った牛はなかなかいません。1000頭に1頭しかいないという話です。とっても貴重な生薬です。血液の流れをスムーズにして心臓の働きを助けます。
・鹿茸末(ロクジョウマツ)
ロクジョウマツは鹿の角を乾燥させたものです。それもただの角ではありません。鹿の角は春になるとポロリと落ちてまた新しい角が生えてきます。その新しい角が生えてきてすぐにものを使います。強壮作用があります。
・人参(ニンジン)
ニンジンは多くの漢方薬に入っている有名な生薬です。滋養強壮の代名詞とでも言うべき生薬です。ニンジンという名前ですがスーパーに売っているものとは違って、ウコギ科のオタネニンジンの根が一般的に用いられています。こちらも強壮作用を持っています。
・羚羊角末(レイヨウカクマツ)
羚とはカモシカのこと。レイヨウカクマツはカモシカの角を粉末にしたものです。神経の働きを落ち着かせたり、血圧を下げたりする働きを持っています。
・真珠(シンジュ)
あのキラキラ光るきれいな真珠がお薬として使われるなんて、何だか不思議ですね。救心には真珠を粉末にしたものが含まれています。鎮静作用があるため神経の働きを落ち着かせる効果があります。
・沈香(ジンコウ)
沈香樹(じんこうじゅ)という木に沈着した樹脂を集めたものです。神経の働きを抑えたり呼吸の機能を高めたりする働きがあります。
・龍脳(リュウノウ)
文字から想像すると龍の脳みそということになりますが、龍なんてどこから捕まえてくるの?残念ながらリュウノウは龍のことではなく龍脳樹(りゅうのうじゅ)という木の樹脂のことです。呼吸機能を高める働きがあります。
・動物胆(ドウブツタン)
何の動物を使っているのかと思ったらこちらはどうやらブタのようです。ブタの胆汁を乾燥させたものがドウブツタンです。救心に含まれている他の成分の吸収を良くする目的で配合されています。
●救心の特徴
救心が気になってドラッグストアで1度でも手に取ったことがある方なら分かると思いますがお値段が高い!1番高いものだと630粒入りで3万円以上もします。こんなに高いのにはちゃんと理由があるんですよ。配合されている成分を見てもらうと分かるようにカエルの分泌物だったり牛の胆石だったり鹿の角だったり、ちょっとやそっとじゃ手に入らないような貴重な生薬が多く使われています。だから高いのですね。
救心は心臓の収縮量を高め、血液の流れを良くしたり呼吸を助けたりすることで、どうきや息切れ、めまいの症状を和らげていきます。日本だけでなく海外でも人気の高いお薬です。
3.市販で買える強心薬その2. 六神丸
●配合成分
・蟾酥(センソ)
・牛黄(ゴオウ)
・麝香(ジャコウ)
・人参(ニンジン)
・沈香(ジンコウ)
・動物胆(ドウブツタン)
●六神丸の効能効果
・どうき
・息切れ
・気つけ
●六神に配合されている成分の働き
救心に入っているものとほとんど同じ成分が使われていますね。救心には入っていなくて六神丸のみに配合されている成分は上から3番目の「麝香(ジャコウ)」のみですね。他の成分については救心のところで詳しく説明しているのでここでは割愛しますね。
ジャコウは鹿の分泌物のことです。鹿のどこから分泌されたものなのよ?なんと麝香鹿の生殖腺から分泌されたもの。麝香がお薬として使えると気がついた人は凄いですね。心臓の働きを高め、血圧を低下させる働きがあります。
●六神丸の特徴
六神丸に含まれている成分は6種類、救心に含まれている成分は9種類。六神丸は救心よりも配合成分が少なくなっています。実は六神丸を改良したものが救心なのです。だから入っている成分がとても似ているんですね。
六神丸も心臓の収縮力を高め、神経や呼吸の働きを整えることで効果を現します。暑くて頭がボーっとするとき、めまいや立ちくらみがするときにお飲みいただけますよ。
4.市販で対応できるのはちょっと気になる症状のみ
救心も六神丸も心臓の働きを良くしてくれる強心薬であることは間違いありません。しかし病院で貰えるお薬のように強い働きを持っているわけではないので注意が必要です。
・病院で心臓に関係する疾患の治療をしている方
・強い症状が出ている方
・心電図などで異常が出ている方
など、明らかに心臓に異常がある方は市販薬を使わずに病院の受診を優先してください。市販の強心薬は「検査では特に異常がないけど、ちょっと気になる症状がある」という方向きのお薬です。
5.まとめ
市販の強心薬には多くの種類はなく、ほとんどが六神丸か救心です。どちらも驚くほど貴重な生薬を何種類も使っているためお値段はやや高いですが、海外の方にも人気なほど知名度の高いお薬です。牛や鹿がお薬になるなんて驚きですね。いったい誰がどうやって見つけたのかが気になるところでもあります。
六神丸や救心はあくまでも心臓の働きを助けてあげるもの。明らかに症状が出ている場合や病院ですでに治療をされている方は病院での治療を優先してください。六神丸と救心とどっちを買おうか迷ったら六神丸の改良バージョンが救心ですので救心を使ってみると良いでしょう。どうきや息切れが治まるとこれまで以上に毎日を楽しく送れるようになりますね。
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